そして忘れもしない8月19日。売り主からの合意があり、本契約へ。正直、なんだかふわふわとした感じで、自分が家を買うんだという実感はほとんどありませんでした。なんなら最初に実感を覚えたのは、契約のために不動産会社まで赴くとき。わざわざ営業の方が家まで車で迎えに来てくださったのを見て、「なるほど、1000万円単位の買い物をするというのはこういうことか」と妙に納得したものでした。

基本的に、もてなされることに不慣れな身。洋服を買うときでさえ、レジカウンターで商品を渡して終わりでいいのに、店員さんがわざわざ店舗の表まで見送ってくれることに申し訳なさと気恥ずかしさを感じていた僕ですが、不思議なものでこのときばかりは「まあ、2300万円払うし、いっか」と妙に開き直った気分でした。完全にエセセレブです。

マンション購入の大まかな流れは、売買契約・重要事項説明→ローン本審査→金消契約(金銭消費貸借契約)→決済といった感じ。

なので、契約を終えたら、次は本審査のためにまた必要書類を集めなければいけません。僕の場合は3期分の確定申告書に納税証明書です。ちなみに納税証明書は「その1」と「その2」が必要なのですが、なんのことかさっぱりわからなくてヤマカンで「その2」だけ出したら、「その1」がありませんと言われて結局2回も税務署に行くことになりました。何事もわからないのにヤマカンでやってはいけません。

金消契約とは、借入を受ける上で金融機関と借主が組む契約のこと。この段階で必要になるのは、印鑑証明書と住民票です。特に実印の登録などは行っていなかったので、ここで初めて実印登録しました。ちょっと大人になった気がしました(遅い)。金消契約自体はあっさりしたもので、金融機関まで行って、簡単な説明を受け、必要な書類にサインをする程度。たぶん1時間もかからなかったと思います。

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実際の契約時の書類(著者撮影)。

それが終われば、いよいよ決済。お世話になる金融機関で、僕と営業さん、金融機関の担当者さん、売り主さんに司法書士さんなどが一堂に会し、残代金の授受と物件の引き渡しを行います。と言っても、素人である僕に詳しいメカニズムは不明。ただひたすら出される書類に判子を捺していたら終わったというのが正直なところです。たぶんあの中にワケのわからん契約書類が1枚くらいまぎれ込んでいても、気にせず僕は判子を捺していたと思う。そう考えると、つくづく世の中は人間の良心で成り立っている。所要時間は1時間30分程度。金融機関による振込処理が完了し、着金確認がとれたら終了です。

かくして鍵を受け取り、晴れて物件は僕のものに。余談ですが、その日は生涯最大の推しコンテンツである『おっさんずラブ』の続編発表の日でもありました。こんな記念すべき日と重なるなんて、まるで僕の門出を神様がお祝いしてくれているかのよう。なんだかすべての物事がうまくいくようにさえ感じられました。

が、それこそが大いなる錯覚。マンション購入を終え、いよいよリノベーションへ。本当の苦労はここから始まるということを、そのときの僕はまだ知るよしもありませんでした……。

 
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『自分が嫌いなまま生きていってもいいですか?』
講談社・刊 1430円(税込)
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生きづらさを抱える人たちから、共感の声多数! “推し本”著者による人気連載が書籍化。

本屋に行けば「自己肯定感」をテーマにした書籍がずらりと並ぶ昨今。
でも、実際に自己肯定感の低さで悩む人にとっては、自分を愛することの大切さは理解しつつ「そんな簡単に好きになれてたら苦労しないよ…」というのもまた偽らざる本音でしょう。

本書では、自分が嫌いなことには誰にも負けない自信のある(?)著者が、

◆「自分嫌い」を決定づけた、幼い頃からのコンプレックスや苦い経験の数々
◆大人になって日々直面する“自己肯定感が低い人あるある”
◆自分を好きになりたくて、“自分磨き”で試行錯誤した日々
◆そして辿り着いた「これ以上、自分が傷つかないための方法」

を、面白おかしく、ときに切なさも交えて綴ります。

自分のことが好きになれなくても、人に優しくすることはできるし、幸せにもなれるはず。「なりたいものになれなかった」「誰にも選ばれなかった」そんな自分と、折り合いをつけられずにしんどさを抱える人たちの背中に、そっと手を添える一冊です。


構成/山崎 恵
 

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