ジャーナリストの鋭い視点で、ジェンダーや子育ての問題を伝えてきた中野円佳さん。今回は法学博士で、コメンテーターとしてもおなじみの山口真由さんとの対談が実現しました。

じつは、二人は同じ高校の先輩と後輩同士。また山口さんは信州大学社会基盤研究所特任教授、中野さんは東京大学男女共同参画室特任助教と、現在は教育の現場に身を置いているという共通点もあります。「高学歴」で「ハイキャリア」と聞くと、私たちはつい「自分とは違う」と思ってしまいますが、果たしてそうでしょうか。そうした線引きの視線を感じながら、それでも二人が自分たちの言葉を発信する理由とは。過去の苦い経験から若い世代への思いまで、赤裸々に語ってくれました。

 

高学歴女性が挫折話を発信する意味


中野円佳さん(以下、中野) 私が高校入学直後に女子サッカー部を作ったんですよね。山口さんは男子サッカーのマネージャーをしながら、人数が足りないときに一緒にボールを蹴ってくれた恩義のある先輩。私たち後輩はいつも慕っていましたし、東大を最初に案内してくれたのも山口さんでした。

そんな長い付き合いで、山口さんが著書『ふつうの家族にさようなら』(2021年)を出されたあたりからずっと対談したいと思っていたんですが、今日はそれと2023年に出された『挫折からのキャリア論』についてお話できたらと。本にも書かれていることではありますが、「高学歴女性の挫折話」を発信することについて改めて、どう考えていますか。

山口真由さん(以下、山口) 私が挫折の話を書いたのは、女性同士、もっとわかっていれば助け合えたのにと思うことが多かったから。財務省でも弁護士事務所でも、仕事のときにもっと「困っている」と言えばよかったと思うんです。

私個人の話で言うと、あのころはマックスまで仕事を引き受けて、評価されようともがいたけど、その結果、自分の武器だったスピードを犠牲にしてしまっていました。でも今の経験をもってあの頃の自分に向き合えたら、そのやり方は間違っているということができる。数を絞って1つ1つ質の高いことをすればいいし、(弁護士なら)M&Aが王道とは言われているけどあなたの得意なことはたぶんそれじゃない、ということが言えたと思うんです。1つか2つ、得意な分野で専門家になれたら、人は待ってくれる。それをもとにキャリアを形成する道もあるということが、今なら言える。

だけど私が若い時は、そういう助言を先輩に求められる空気ではなかったし、上の世代の女性も、下の世代に手を差し伸べられる雰囲気ではなかった。仕事のパートナーである女性たちも自分が評価されるのに必死で、私たちを助けてくれる感じもなかった。それはどうしてかというと、男性が多い職場の中で、女性がある種のキャットファイトを強いられているというような感覚があったんですよね。

例えば、財務省のときには「今度入ってきたあいつはミス財務省になりたいって言ってるぞ、お前どうなの」と言われたり。私は一言もそんなこと言っていないのに。ほかにも「みんな〇〇派だけど俺だけは真由派だぞ」とか。実際はその〇〇ちゃんと私は仲のいい同期なのに。女が少ないと、勝手にリングの上に載せられるようなところがあったと感じています。