山口真由さん・中野円佳さんの対談、第2回。社会の空気は少しずつ変わりつつあるとはいえ、働き方などまだまだ問題は山積みです。また女性同士であっても、立場や環境が変われば見える景色は変わるもの。女性たちにもさまざまな意見がある中で、それでもよりよい方向へ向かうために「声を上げる」ことについて、2人の意見はーー。

「みんな〇〇派だけど、俺だけは真由派だぞ」男性社会の中にある、女性同士を対立させる構造【山口真由×中野円佳対談】」>>

 


対処法ではなく、問題のシステムから変えていくには


ーー前回のお話では、問題は根深いながらも、社会は変わってきているという希望も感じられました。女性同士の対立は少しずつ解消され、良い方向に向かっていると考えてもよいのでしょうか。

山口真由さん(以下、山口) 本当の解消のためには、圧倒的な数を占める正社員の働き方が、子どもやケアが必要な家族がいることを前提にしていないという問題は残っていると思います。私は仕事でメディアに関わることも多いですが、たとえば出版社とかも、みんな夜遅くに働くシステムになっていたりするじゃないですか。早い時間に原稿をもらえればこちらもすぐ対応できるのに。そういった現状のシステムを自分だけで変えられるとは思わないけど、少しずつ体当たりをしながら、ぎゅぎゅぎゅぎゅっと扉を開いていくしかない。

ただ思うのは、これどうにかしてもらえませんか、とこちらから言えば、対応してもらえることも結構あるんですよね。そういうのがある程度の人数になれば、システムも変わっていくんじゃないかと思います。


中野円佳さん(以下、中野) まさに。みんなのためになることですよね。私自身子どもを産んだ後、保育園に入りやすくする方法などを指南してくれる方が多かったのですが、いや、私個人が自分の子をねじ込めることが重要なのではなくて、希望する人がみんな入れる仕組みについて議論したいんだけどと思ったことがあって。

『「育休世代」のジレンマ』(2014年)を出した後、個々人が抜け道を見つけるのではなくいかに全体の改革をするか、公道を広げるためのことを考えたいと言ってきました。会社でも、後輩のためにはこういうことを伝えたほうがいいということを提案したことがありますが、そうやって声を上げると、何かと「自分のわがままを通そうとしてる」と見られがちです。

ただその一方で、最近すごく気になるのは、同世代の高学歴女性の中に「自分は税金をたくさん払っているんだから、保育園に優先的には入れないのはおかしい」というようなことを言う人たちがいること。再配分とか、応能負担という発想がない。こういう発言、よく聞きませんか。