「男女平等」や「女性活躍」など、華やかな言葉ばかりが空回りする現代社会で、日本でも大きな社会問題として認知されつつある「中高年女性の貧困」。日本同様に家父長制に支配された韓国でも、こうした問題は大きく取りざたされています。韓国で多くの映画賞を獲得した話題の映画『ビニールハウス』は、まさにそれを描いたサスペンススリラー。

 


不動産バブルに湧く韓国で住居における格差は深刻で、韓国ドラマの主役たちが暮らすソウルのキラキラしたマンションは本当に限られた人のもの。タイトルの「ビニールハウス」は、映画で話題になった「半地下」同様に、時に住居貧困の象徴として描かれるものです。「中高年女性の貧困」のただ中にある主人公ムンジョンも、そんなビニールハウスに暮らす一人。「自身の母親を見て着想した」という29歳の監督イ・ソルヒさんは、同世代の女性が「人生で多くのことを諦めざるをえない理由」について語ってくれました。

介護・ケア労働に苦しむ中高年女性、それを見て結婚をやめた娘たち。「不幸ポルノ」と呼ばず対峙してほしい【話題の韓国映画「ビニールハウス」監督インタビュー】_img0
左/主演をつとめたキム・ソヒョンさん、右/イ・ソルヒ監督 ©masumi kojima

イ・ソルヒ Lee Sol-hui 
1994年生まれ。成均館大学校で視覚芸術を学んだ後、『パラサイト 半地下の家族』(19)のポン・ジュノ監督や『スキャンダル』(03)のイ・ジェヨン監督らを輩出した名門映画学校、韓国映画アカデミー(KAFA)で映画監督コースを専攻。初の短編映画『The End of That Summer』(17)は第18回大韓民国青少年映画祭、第14回堤川国際音楽映画祭にて上映された。2021年には『Look-alike』(20)が第22回大邱インディペンデント短編映画祭のコンペティション部門に、『Anthill』(20)が第26回釜山国際映画祭の Wide Angle部門にノミネートされ注目される。初の長編映画『ビニールハウス』(22)は、第27回釜山国際映画祭でCGV賞、WATCHA賞、オーロラメディア賞を受賞し、新人監督としては異例の3冠を達成。さらに第44回青龍映画賞、第59回大鐘賞映画祭で新人監督賞にノミネートされた。