世界を席巻するK-POP。その本拠地韓国で、K-POPと拮抗する大ブームを巻き起こしているのが、トロットです。トロットとは、韓国の伝統的な曲調にのせて、家族や男女の情愛を歌い上げる楽曲ジャンル。トロット歌手で一番人気のイム・ヨンウンは、韓国の賞レースでBTSの最大のライバルとも言われたほどです。
そんなトロットのオーディション番組『トロット・ガールズ・ジャパン』が日本に初上陸。12歳から50歳までの54組57名で激しいバトルを繰り広げました(ABEMA、WOWOWにて配信中)。番組を仕掛けたのは、かつてSMエンターテインメントで東方神起や少女時代などの制作、マネージメントを統括し、JO1やINIがデビューした『PRODUCE 101 JAPAN』を発案したプロデューサー、チョン・チャンファンさんです。なぜいま、トロットが脚光を浴びているのか。チョンプロデューサーへの単独インタビューで、その理由やトロットと日本の知られざる歴史について聞きました。
チョン・チャンファン
(株)n.CHエンターテインメント 代表プロデューサー。過去には(株)SM エンターテインメントで東方神起、SUPER JUNIOR、少女時代、SHINee、EXOなどアーティストの制作、マネージメント総括していた。(株)SMC&C代表取締役を務めるなど、また(株)CJ ENM音楽事業本部長として、『PRODUCE 101& PRODUCE 101 JAPAN(JO1、INI がデビュー)』を発案、企画責任者を務めた“韓国のレジェンドプロデューサー”。
トロットのオーディション番組が想定外の大ヒット、ミドルエイジ〜シニア層が「推し活」に目覚め社会現象に
――決勝戦をドキドキしながら見ていました。優勝したのは、元アイドルの福田未来さんでしたね。
チョン・チャンファンさん(以下チョン):福田さんが優勝すると思っていました。感性が素晴らしいので。歌が上手い人はかなり多かったけれど、人を引き寄せる力がありました。若いのにとても成熟していました。
――『トロット・ガールズ・ジャパン』を企画したきっかけを教えてください。
チョン:韓国でトロットのオーディション番組が、すごく成功していたのです。それを説明するために、韓国オーディション番組の歴史をお話ししましょう。オーディション番組には、3つの段階がありました。それまでオーディション番組がほとんど存在しなかった韓国で最初のブームが起きたのは、2000年代初頭から半ばにかけてでした。「SUPER STAR K」が代表的な番組で、ソ・イングクさんのようなソロ歌手がブレイクしました。
その流れに変化が起きたのは、2014年ごろ。アイドルグループを作る「PRODUCE 101」が国民的に凄く盛り上がり、似たような番組がたくさん生まれました。
トロットはその次の段階です。いろいろなオーディション番組ができるなか、「トロットをテーマにするのはどうか」ということになったのです。それが想定外の大ヒットに。日本は年齢が高い人も推し活をしてグッズもよく売れるし、若いころから好きだった歌手をずっと応援する人も多いですよね。韓国で音楽を楽しむのは主に若い人たちで、歌手が年を取ると、ファンの関心が別の人に向く傾向があります。ところが、トロットはもともと年齢を重ねた人向けの音楽なので、これまで推し活をしたことがなかったミドルエイジからシニア層が、まるでアイドルを推すようにトロット歌手を応援しました 。とても意外な反応だったので、韓国でもすごく驚きました。70代の方がファンクラブに入ったり、コンサートでペンライトを振ったり。日本ではよくある風景かもしれませんが、韓国では新しい社会現象になりました 。
結果、そのオーディション番組に参加した人からスターが誕生しました。音楽チャートで1位になったイム・ヨンウンさんは、BTSと同じぐらい人気があります。BTSのファンとは年齢層が異なりますが、社会に大きな影響を与えました。
こうした現象を見ているうちに、トロットのオーディション番組を日本で開催したらブームが生まれるかもしれないと思ったのです。
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