ダウンサイジングのメリット


相談者の百合子さんは、夫と息子2人の4人家族。長男は家を出ているため、戸建ての持ち家には使っていない部屋があるとのこと。居室は2階に集中していて、洗濯物を干すベランダも2階ということで、階段の上がり下りが面倒とも感じています。

このように、家族構成や身体面の変化から、今までの住まいがミスマッチを起こすこともあります。

一般的に、住まいのダウンサイジングというと、戸建てやファミリータイプのマンションからコンパクトサイズのマンションなどにダウンサイジングすることを指します。この時メリットとして挙げられるのは、より利便性の高い立地に買い替える選択肢もあるということ。
 

 


ダウンサイジングのデメリット


ダウンサイジングにもデメリットはあります。場合によっては、住み慣れた土地を離れ、家族の思い出の残る家を手放すことは最大のデメリットかもしれません。また、戸建てからマンションに移ると、上下両隣の生活音が気になるということもデメリットとして考えられます。

築年数が経っている物件は安価ですが、修繕積立金や管理費が高額なことも。国土交通省が2013年に発表した資料によると、取り壊されたマンションの平均寿命は68年。事前に大規模修繕計画を調べておくことで、余計な出費と心労を抑えることができます。
 

介護のしやすさから見るマンションリフォーム


今回の相談者・百合子さんの母親は、バス便エリアの物件ではあるものの、生活環境は良好のマンションにお住まいとのこと。1人で住むために駅近の1LDKなどに引っ越すというのは、事情が合えば老後の生活に適しているのかもしれません。

ただし家の買い替えには多額の手数料がかかり、老後資金から捻出する必要があります。年齢もすでに70代に差しか掛かっているので、今はたとえ元気でも、いつ介護が始まってもおかしくありません。

この場合は、生活する空間を介護しやすい間取りにリフォームし、半分は何かあった際に子が宿泊できる空間としてそのまま残しておく、というパターンが良いかもしれません。ご自身の生活環境をダウンサイジングして整えるというものです。小さくしすぎてから「こんなはずではなかった」とならないよう、今の住まいのままで何ができるのかを考える方が、60代後半からは大切なのではないでしょうか。

なお、国は近年、行政や商業、住まい、医療、介護などのあらゆる機能を街の中心部に集約させる「コンパクトシティ政策」を進めています。札幌市、稚内市、青森市、仙台市、富山市、宇都宮市、豊橋市、神戸市、北九州市、松山市、佐世保市などがこれに当たりますが、このような地域を選べば車で買い物に行く必要もなく、病院や福祉施設への移動も楽になります。行政サービスも充実するので、訪問介護なども受けやすくなるかもしれません。後々、相続することになった場合も、郊外の戸建てよりは売却しやすいでしょう。

もしも歳を取って住み替えを考えるのであれば、高齢化社会のニーズにもマッチしたコンパクトシティを選ぶというのも1つの手ではないでしょうか。