作家・ライターとして、多くの20代~40代の男女に「現代の男女が抱える問題」について取材をしてきた山本理沙。その赤裸々な声は、まさに「現実は小説より奇なり」。社会も価値観も変化していく現代で、結婚についての悩みは非常に多いようです。

今回取材に応じてくれたのは、とにかく「キレやすい暴君のような夫」からどう逃れるべきか試行錯誤を15年以上続けているという春奈さん(仮名・39歳)。まず驚いたのは、彼女が「記録」としてスマホに残している大量のメモ。夫の暴言や暴行、浮気、泥酔で暴れたという記録が、なんと300以上も保存されていたのです……。

 
取材者プロフィール
 春奈さん(仮名)39歳
職業:自営業

家族構成:13歳年上の夫、中学生の娘   
 


家の中に「ジャイアン」がいる恐怖


現在、離婚準備中という春奈さん。明らかに凡人離れした長身スリムな体型と艶の光るロングヘア、そして美しい所作に思わず見惚れてしまいます。

「暴君」という夫のエピソードはかなり酷いもので、筆者は取材中に何度か言葉を失いましたが、春奈さんの口調や表情は一切暗くなることなく、前向きで溌剌としていることに驚かされます。負のオーラ、のようなものが一切ないのです。

「事情を知る友人からもそう言われることが多いし、不幸に見えないのは嬉しいですが……。たしかにもともとポジティブな性格ではあるのと、一つ信じていることがあるんです。

夫から与えられるストレスは、もう私の人生の一生分のストレスだと思っていて。これさえ消化しちゃえば、もう私には明るい未来しか残ってないはず。今は試練の最中で、乗り越えれば楽しく自由な人生を生きられる。そう考えているんです」

しっかりとした口調と笑顔でそう言い切る春奈さん。無理をしているふうでもなく、その言葉には強い自信と意志が漂っています。

「でも、昔はストレスをもろに受けて摂食障害になったこともあります。夫が怖くて、人生が不安で、暴食して吐かないと眠れない辛さ。当時のことは辛すぎて記憶から消えている部分も多いですが、すぐキレて暴れる夫に怯えて暮らす日々でした。

でもそれは、私に力がなさすぎたのも原因の一つだと思っています。学生時代に年上の夫と出会い、せっかく希望の会社に就職もできたのに、専業主婦に逃げたのが始まりだったので……」

数年前まで、機嫌が悪かったりお酒を飲むと暴れて手が付けられなくなるという夫に手も足も出ず、言いなりになるしかできなかったという春奈さん。ですが、現在夫の暴君ぶりは比較的落ち着いているそう。

「私が経済力をつけて自立し始めてから、夫は以前より少し大人しくなりました。それでも、昨日も何かに苛ついたのか家の中で突然足を引っかけられて転ばされそうになったりしましたけど……。

何というか、彼はものすごい『いじめっ子気質』なんです。可愛く例えればジャイアン。でもそういう人って、やっぱりのび太みたいな弱者をターゲットにする。出来杉くんには下手に手出しはしないですよね。私、家庭内でもそういう構図はあると思うんです」

春奈さんはご自身の経験を通して、専業主婦が楽で楽しい選択肢だとは限らない。物理的にも精神的にも自立し、経済力と知恵を身に着けることは、女性の幸福度に大きく関わると考えているそう。

そして、本来人が心身ともに安心できる場所であるべき家庭内に「いじめっ子」がいるという状況はどんなもので、そこに陥ってしまった経緯を詳しく伺っていきます。