これが「ぶつかりおじさん」?
また夫は、生活費だけでなく、夫婦として生活するようになると、たびたび不機嫌で攻撃的な態度をとるようになったそうです。
「あるとき、家の洗面所ですれ違うときに、思いっきり肩にドン! と体当たりされたんです。よくSNSで炎上したり、人混みで注意喚起されている『ぶつかりおじさん』、まさにあんな感じ。
突然の衝撃だったので、思いっきりよろめいたし驚きました。しかも私は妊婦ですよ? 『何するの?!』と咄嗟に叫ぶと、『お前が邪魔な場所でボケッとしてるからぶつかったんだよ!』と逆ギレ。もうびっくりして、言葉を失いました」
妊婦の妻に突然体当たりをするなんて、明らかに異常としか思えません。しかしこれ以来、この程度のことは日常茶飯事となるのです。
「また結婚前は知らなかったのですが、夫は私が思っていたより収入が低かった。彼の部署が特殊で、かなりの額の経費を自由に使えたんです。交際費として落とせる飲食代などは大盤振る舞いしていましたが、実際に使えるキャッシュはさほどなく……なので、結婚した途端に私に使うお金は渋るようになりました」
『俺が面倒を見る』という発言に、さほど信頼性はなかったようです。
もともと派手な夜遊びが好きな夫は、次第に妊婦の春奈さんと家にいても物足りなさを感じるようになったのか、妻を放ったらかして毎晩飲み歩くようになりました。
春奈さんが苦言をしても「仕事なんだよ、誰がお前を養ってると思ってるんだ」と強く言われれば何も言い返すことはできない。
豹変する夫に戸惑いながらも、春奈さんは娘さんを出産。しかし夫の生活は相変わらずで、毎晩飲み歩き、育児に協力することはありませんでした。
「産後は心も身体も不安定になり、夫を問い詰めたこともありましたが、すると、もう女の私では到底敵わないと思うほど、ヤクザのようにキレて暴れるんです。お酒が入っているときは特にそう。
赤ちゃんの娘の手前、下手な動きもできず、当時はもう我慢するしかありませんでした。辛かったけど、まあでも実際に仕事の付き合いではあるから仕方ないとも思っていたんです」
そうして春奈さんの孤独なワンオペ育児生活が始まりました。相変わらず生活費5万円の苦労や、夫がほとんど家にいない寂しい気持ちはありつつも、しかし娘さんがとにかく可愛く、春奈さんはそれなりに幸せに過ごしていたと言います。
しかしながら、娘さんの1歳のお誕生日に、致命的なLINEが春奈さんに届いてしまったのです。
「娘の1歳の誕生日という大事な日だけは絶対に空けておいてと念を押していたのに、夫は接待ゴルフがあると泊まりがけで出かけて行きました。
まあ文句を言っても仕方がないと2人きりでお祝いを楽しんだのですが……。翌日、夫が帰宅する直前にありえないLINEが届いたんです」
ーー●●ちゃんと一緒にいられて楽しかったよ。もう会いたいよ♡
この頃、すでに妻にはまったく使われなくなったハートのスタンプがついた文面とともに、温泉で密着する夫と見知らぬ浮気相手の女性の写真が春奈さんのLINEに誤送信されたのです。
来週公開の後編では、夫の暴君ぶりになかなか身動きの取れなかった春奈さんが少しずつ自立に向けて行動したお話、それを邪魔し続ける夫のいじめ行動、そして警察沙汰にまで発展した事件について語っていただきます。
写真/Shutterstock
構成/山本理沙
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