時代の潮目を迎えた今、自分ごととして考えたい社会問題について小島慶子さんが取り上げます。
先日、放送局でアナウンサーをしている友人と話していて、女子アナの幽霊の話になりました。出るんです。見た人が、たくさんいるんですよ。
目撃証言は大体似通っています。
若くて、目鼻立ちが整っていて、計算高そうな女の姿をしている
金持ちの男を狙っている
女を武器にして狡猾に立ち回っている
ちょっと前に大谷翔平さんがアスリートの女性との結婚を発表した時、ゴシップメディアが「相手が女子アナじゃなくてよかった!」などのSNSの声とされるものを紹介していました。上昇志向の強いあざとい女に騙されなくてよかった、という意味のようです。
その後、大谷さんの通訳の水原一平氏が違法賭博をしていた疑いがあることが判明。大谷さんは、自ら会見で一切の関与を否定しました。すると今度は、「世渡りのうまい“女子アナ妻”と結婚しておけばよかったのに」という記事が。承認欲求の強い世渡り上手のアナなら、危機管理能力に長けているはずだというのです。
こんな女はやめておけ、も、こんな女にしておけばよかったのに、もどちらも“女子アナ”。なぜなのでしょう。ゴシップメディアは太古の昔から女性アナを性的に消費したり、誰がエースだとか誰と誰がライバルだとか、誰が社内で人気で誰が評判が悪いとか、出所の不確かな噂話で女の争いを描いてきました。かつてアナウンサーが人気の職業だった頃は、そんな記事がよく読まれたのでしょう。
テレビ黄金期の女子アナブームは35年ほども前の話。当時と比べると、今は志望者も激減しているといいます。けれど典型化された女性アナ像は、相変わらずです。お馴染みの「嫌な女」像は、時を超えて人々の脳内に生き続けているのです。アナウンサーというわかりやすい姿形で。
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