お金の使い方、税金の集め方は、誰がどのように決めるのでしょうか? これも憲法が定めています。
 


83条〈財政民主主義〉国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。

84条〈租税法律主義〉あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。
 


楾 要するに、私たちが選んだ国会議員が、私たちの声をふまえて、国会で議論して決めるという仕組みです。私たちが関心を持っていないと、私たちのためではないことにお金が使われたりするかもしれません。
私の講演では毎回、「今、国会やってますか?(会期中ですか?)」という質問を投げかけます。通常国会は何月から何月まで? 予算の審議をするのは何月から何月? わからなくて固まってしまう方が圧倒的多数です。有権者の多くが、国会議員がなにをしているか、いま国会をやっているかどうかなど考えたこともない、ということでは、政治家は自分に都合のよいようにやりたい放題になってしまいかねません。

渥美 最近話題になっている武器輸出についてはどうですか?

 日本は平和国家として「武器輸出は禁止」という「武器輸出三原則」でやっていましたが、これも安倍政権下で閣議決定によって方針転換しました。言葉も婉曲的な表現に変えてしまいました。「武器」を「防衛装備」に、「輸出」を「移転」と言い換えて、「防衛装備移転三原則」と。輸出可能な武器の範囲もなし崩しに広がって、今は「殺傷能力がある武器も輸出OKでいいんじゃないの?」というような展開になっていますよね。武器の輸出自体が直ちに違憲かというと必ずしもそうとは言い切れませんが、9条の趣旨からすると「方向性としては逆」という言い方はできるかもしれません。
それと、「決め方」の問題があります。武器輸出は禁止という原則は国会で決めた方針なので、国会で議論した上で方針を変更するならまだしも、閣議決定だけでひっくり返すのは変ですよね。ちなみに、さきほど述べた敵基地攻撃能力についても、2022年の年末、通常国会が終わった後に、内閣が閣議決定で決めてしまいました。

渥美 閣議決定って一体なんなんですか。どうしてあんなにじゃんじゃんと。

楾 内閣は、内閣総理大臣とその他の国務大臣の合議体です。内閣が行政権を行使するうえで、大臣ごとに方針がバラバラでは内閣として仕事ができませんので、全員が集まって閣議決定で方針を決めます。閣議決定自体が問題ではなく、何を閣議決定するかが問題です。たとえば、国会で議論して法律で決めるべきことを閣議決定だけで決めていたら、三権分立にも民主主義にも反していることになります。そのように閣議決定が濫用される事例が、安倍政権以降たくさんあります。