—— ワークライフバランス懇談会とは、どのようなものでしたか?

ワークライフバランス懇談会は、会社の食堂の端にある会議室でお昼の休憩時間に開催されました。男性女性問わず、さまざまな部署の方が参加し、労務担当役員を囲んで、様々な意見を言い合える場でした。

参加者は次々と、育児休暇明けのキャリアアップの悩みや、子どもの受験と仕事の両立の悩みについて話していきます。そんな話を聞きながら、初め私は怖じ気付いていました。失業しそうな私と周りの参加者とでは、悩みの質に大きな隔たりがある……惨めな気持ちにもなりました。

しかし、「労務担当役員に直接訴えることができるめったにない機会を逃してはいけない」という思いが次第に勝っていったのです。

思い切って挙手し、恥を忍んで、参加者の前で、私の家の事情を話しました。

ーすでにさんざん会社のお世話になり、短時間勤務で夜勤や祝日出勤も免除していただきながら、働かせていただいていること。

ーそれでもなお、娘が小学4年生となる来春以降も短時間勤務を継続できないと、失業の危機にあること。

ー職場の上司の理解で働くことができているけれど、上司次第で運用が変わってしまうことは恐ろしく、私も胸を張って働いていきたいこと。

ー娘の知能は2歳未満のため、生涯にわたり、誰かのお世話が必要なこと。

ー娘がもらえる障害者年金は月額7万円ほど。一方で、当時参加した障がい児を育ている保護者の勉強会によると、知的障がい者の月平均の支出は約14万円。その差額は親が貯蓄してまかなわなければならないこと。

ーそのためには、私が生きている間、体が動く間はずっと働き続けないといけないこと。

参加していた同僚たちは、真剣に耳を傾けてくれました。
 

 


労務担当役員は「いつでも役員室に話に来てほしい」と言ったあと、こう続けました。

「でも、ひとつひとつの個別案件には応えられないんだよね」