『男の目を引く服は、頭が悪い女が着るんだよ』
 

交際中の関係はかなり良好だった2人。結婚して一緒に暮らすことに麻衣さんは当初は夢しかなかったそうですが、少しずつ夫に違和感を持ち始めたそうです。

「彼はとても優しく、妊婦の私を物凄く労ってくれるのはありがたいと思っていました。だから最初は優しさだと思っていたんですが……彼は毎朝仕事に出かける前に、私の1日のスケジュールを細かく聞くんです。仕事内容から何から何まで。

あくまで普通の温和な口調ですが、例えば『著者との打ち合わせ』と言うと、誰? どんな内容? どうして麻衣がその会議に出るの? とか。彼が納得するまで質問は終わりません。そしてその著者をウェブやSNSで調べ、『胡散臭そうな奴だな』なんてケチをつけることもよくありました」

仕事の内容はまだしも、麻衣さんがプライベートの予定を入れるときは、禁止はせずとも相当細かい説明を求められたそうです。

「仕事帰りに友達に会うときなんかは、もうその子のプロフィールや出会いの経緯、そしてなぜ妊婦という身体に負担をかけて会う必要があるのかなど、ちょっとしたプレゼンが必要になりました。

店名や滞在時間を報告するのはもちろん、間違いがあったら困るからとお酒のある店はやめて欲しいと言われたり、また大体は夫が迎えに来るパターンでした」

「男の目を引く服は、頭が悪い女が着るんだよ」VネックやタイトスカートはNG...妻の服に口出しする束縛夫の異常行動<br />_img0
 

しかしながら、麻衣さんはもともと交友関係が広いほうではなく、どちらかというと内向的で友人との時間を多く必要とするタイプでもなかったことから、そんな夫の行動もさほど気にならなかったそう。

彼の姿勢はあくまで「妊婦の妻が心配」というもので、多少の違和感はありつつも、麻衣さんも夫を受け入れていました。

思いやり深い愛妻家、都心の利便性の高い新築マンションでの新婚生活も麻衣さんにとって快適で幸せなものであり、夫への感謝が断然に優っていたのです。

「冒頭で少し話した通り、夫は私の服装にも口を出すようになりました。とにかく露出のある服を嫌うんですが、ノースリーブやオフショルダー、丈の短いものはもちろん、Vネックやタイトスカートなど身体のラインが少しでも出るものはNGです。

『下品な服は変な人が寄ってくるから危ない』『男の目を引くような服は頭が悪い女が着るんだよ』とか、色々と言っていましたが……当時の私は、ああそうか、と聞き入れていました」

そんな夫と暮らすうち、麻衣さんは自然と自分から夫の苦言を避けるようになっていったそうです。

友達から誘われれば、まず夫へ何と報告しようか考える。彼へのプレゼンが少々大変だと思えば、その誘いは断ってしまう。洋服に関しても同じく、「欲しい」と感じても夫の目にどう写るか考え、微妙であれば購入はあきらめるのです。

「そのくらいであればさほど苦じゃなかったので、彼に流されていた私も悪いのかもしれませんが……。妊娠中、夫の発言に驚き、始めて口論になったことはよく覚えています。私が無痛分娩をしたいと言ったら、彼に激しく拒否されたんです」

 

夫は、「お腹を痛めて出産してこそ母親」「麻酔は子どもに負担がないとは言い切れないのに、麻衣ちゃんはなんて酷いことを言うんだ」などと妻を詰ったそう。

しかし麻衣さんは出産への不安や、そして何より出産は麻衣さん自身がするものなので、始めて彼に軽い反抗をしました。すると、夫は信じ難い言葉を口にしたのです。

「私が無痛分娩がいいと主張し続けると、彼は『じゃあ、どうせ麻酔をするなら帝王切開にしよう』と言いだしたんです。なんなら、もともと帝王切開にして欲しいと思っていたとか。

というのも……帝王切開のほうが母体の回復が早いし、女としての機能も落ちないだろうと……。要は、性行為のことを言っていたんです。帝王切開のほうが女性器にダメージがないだろうと。彼はそんな理由で、私に帝王切開を勧めたんです……」

後編では、産後にさらに夫の束縛や支配がエスカレート、家から出ようとすると救急車を呼ばれたなどの壮絶なお話を伺っていきます。


写真/Shutterstock
取材・文/山本理沙
 
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