自分の娘たちを含め、次世代の子たちに遺言を残しておきたくて


——同年代のファンだけでなく、若い人たちに目線を合わせているのは、娘さんが「ヘアメイクになりたい」と言っていることも影響しているとか。

イガリ:私は40代半ばで、ヘアメイクとしてバリバリ働ける時間はそんなに長く残されていないと思うんですよね。だから、今のうちに自分の娘やヘアメイクを目指す次世代の子たちに遺言を残しておきたくて(笑)。最初に“イガリメイク”が流行って10年ほど経ちますが、去年は海外のインスタグラマーの影響で『#IgariMakeup』ブームが再燃しました。そうしてメイクのトレンドは10〜20年周期で繰り返されるものだし、引退する前に私のメイクのノウハウや考え方を伝えておくことにも意義があるはず。将来、ヘアメイクになりたがっている娘が私のテクニックを役立ててくれるかもしれないし、WHOMEEが好きな女の子がお母さんになったときに、自分の子どもにメイクの楽しさを教えてあげてほしいと思っています。

イガリシノブ「世の中の速さにコスメの売り手も買い手も追いついてない」ヘアメイク20年目の危機感から始めた意外な活動_img0
 

——イガリさんは母子生活支援施設で母子向けのメイク講座を行うなど、ご自身のメイクのノウハウを幅広い人たちに惜しみなく伝えてきた印象です。

イガリ:これまでの活動を通して、引きこもりがちだった女性が、メイクが好きになって気持ちが前向きになり、人生に変化が起きる瞬間を何度も見てきました。お母さんに顔のコンプレックスをチャームポイントに変えるテクニックを教えれば、同じ悩みを持つ娘が可愛くなる手助けをしてあげられますよね。その前向きな親子関係をサポートすることが私なりの社会貢献でもあるんです。

——イガリシノブ展では、廃棄されるコスメを画材として使ったアートで遊べるコーナーも。楽しい体験を通して社会貢献の輪を広めていくスタンスがイガリさんらしいですね。

イガリ:最初にお話した通り、ショップの売り場には同じようなコスメが大量に売られています。人間の顔の面積は変わらないのに、使い切れない量のコスメが作られて、使われることなく捨てられてしまう商品も多い。だからこそ、私はコスメを使い切るためのテクニックを教えることに力を入れたいですし、スミンクアートさんの開発したコスメ画材(廃棄化粧品を特殊加工した粉末状絵の具)にフィーチャーすることで女の子たちが環境問題に触れるきっかけを作っていきたいと考えています。

——イガリさんって表向きはポップでイケイケなお姉さんですが、活動内容はチャラくないですよね。

イガリ:そうそう、私、意外とマジメなんです(笑)。でも、メイクも環境問題も、基本的には楽しいことを広めていきたいだけなので、ぜひ気軽に足を運んでいただきたいですね。美味しくて可愛いパフェも食べられますよ!
 

 

<INFORMATION>
「イガリシノブ展 ~人は街のあかりである~」 

イガリシノブ「世の中の速さにコスメの売り手も買い手も追いついてない」ヘアメイク20年目の危機感から始めた意外な活動_img1

パリで働く日本人の心療内科医・新島小夜子の協力を得ながら、犯人探しに没頭。復讐心を募らせていく。だが、事件に絡む元財団の関係者たちを拉致監禁し、彼らの口から重要な情報を手に入れたアルベールの前に、やがて思いもよらぬ恐ろしい真実が立ち上がってきて……。

イガリシノブによる初の個展。これまでの人生やメイク展示のほか、来場者自身のチャームポイントがわかる「骨格理論」の体験型展示などを楽しむことができる。ラフォーレ原宿館内の飲食3店舗とコラボレーションした限定スイーツも展開。子どもたちが自由にぬり絵を楽しめるコーナーを設けている。

会期:2024年6月8日(土)から6月23日(日)
会場:ラフォーレミュージアム原宿 
料金:一般 1000円、大学生・専門学校生 800円、中高生 500円、小学生以下 無料 入場券+グループメイクアップ講座 6000円、入場券+1on1 メイクアップ講座(フルメイク付き) 22000円 

撮影/市谷明美
取材・文/浅原聡
構成/坂口彩
 

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