「洗顔料を使うのは1日1回でいいって本当?」―皮膚科学専門医「はい」。美肌のために知っておきたい大事な「美肌菌」との付き合い方_img0
写真:Shutterstock

「常在菌」「美肌菌」という言葉を知っていますか? 実は、肌の美しさはこの菌がとても関係しているんだとか。とはいえ、実際に常在菌や美肌菌は、目に見えないだけにイメージが難しくて、どう対応すべきなのかよくわかりません。そこで「美肌菌」の名付け親でもある皮膚科専門医、出来尾格(できおいたる)先生にお話しを伺ってきました。

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出来尾格先生
1974年広島県生まれ。慶應義塾大学医学部卒。博士(医学)、日本皮膚科学会認定皮膚科学専門医。2021年より東京慈恵会医科大学医学部皮膚科学講座 講師。専門はアトピー性皮膚炎、にきび、皮膚微生物学。TV番組での常在菌企画で「美肌菌」を命名。瞬く間に美容界に美肌菌の概念が広がるきっかけに。

常在菌や美肌菌って何ですか?


その種類や生態がぼんやりとしか想像できない「常在菌」。彼らはどこからやって来て、人間の身体に何をしてくれるのでしょうか。そして「美肌菌」の正体とは?

――まず、「常在菌」、「美肌菌」とはどういうものなのでしょうか?

出来尾格先生(以下、出来尾):人の身体と共生する細菌のことを「常在菌」と呼びます。皮膚以外に、口、鼻、のど、気道、食道、腸、泌尿器、生殖器にも生息しています。

皮膚の常在菌の数は1 cm²に1000〜数百万個。大きく分けて5つの種類があり、その中に「表皮ブドウ球菌」という善玉菌があります。この菌を「美肌菌」と呼んでいます。

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「善玉菌」である表皮ブドウ球菌以外は、菌バランスや肌環境により、良いことも悪いこともする「日和見菌」と、肌トラブルを引き起こす「悪玉菌」が共存しています。

 


皮膚常在菌はどこからやってきて、どう育って、増えていく?

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生まれたときから表皮ブドウ球菌(美肌菌)は人間と一緒。 写真:Shutterstock

――常在菌そのものがよくわからないのですが、空気中に飛んでいる菌が肌に棲みつくのですか。 そばにいる人の菌が付くのでしょうか。

出来尾:人は生まれたとたんに母親から表皮ブドウ球菌(美肌菌)をもらいます。アクネ菌は思春期に周りの人間からもらいます。

――ということは、私たちの美肌菌は母親と同じ、なのですね?

出来尾:いや、実はそうでもないんです。スウェーデンの研究結果では母親から引き継がれる表皮ブドウ球菌(美肌菌)は2割、父親から1割、あとの7割は(出産した病院の)医療従事者のものでした。新生児のうちに親が赤ちゃんと授乳や抱っこなどで皮膚接触を増やすと、親の美肌菌の比率がより増えます。

――それはなかなか衝撃の研究結果ですね……。美肌菌は家族以外の人と接触して、他人の常在菌がどんどん混ざっていくのでしょうか。

出来尾:菌は汗や皮脂を食べて数十分毎に2倍のペースで増え、寿命がきたり、食べ物が尽きると死んで、皮脂と一緒に自然に剥がれたり洗顔やお風呂で流されます。肌に常在する表皮ブドウ球菌(美肌菌)は、他人の表皮ブドウ球菌の定着を妨げるので、基本的に他人の菌は駆逐されていきます。

 
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