このところ高齢ドライバーによる交通事故についてよく耳にするようになっています。政府は免許の早めの返納を推奨していますし、一部からは高齢者の免許返納をもっと積極的に進めるべきとの声も出ていますが、一方で車がないと生活できない人も多く、問題解決は容易ではありません。さらに言えば、高齢者と言っても、その能力は様々であり、運転能力を見極めるより確実な仕組みが必要との意見もあります。

先日、埼玉県で、横断歩道を歩いて渡っていた小学1年生の児童が、84歳の男性が運転するワンボックス車にはねられる事故が発生しました。加害者は「ひとつ先の信号を見ていた」と証言しており、先の信号と手前の信号を取り違えた可能性が高いと思われます。しかしながら、事故が起こった横断歩道は見通しの良い場所で、信号を取り違えたとしても、横断歩道を集団で子供が渡っていることは認識できそうな状況でした。

加害者は今年3月に免許を更新したばかりで、家族は「免許を返納した方がいい」と返納を勧めていたそうですが、更新の際の認知機能検査に問題はなかったそうです。

近年、高齢者の事故がニュースで取り上げられるケースが増えていることから、高齢者の事故が急増しているイメージがありますが、事故の件数自体は横ばいとなっており、とりたてて増加しているわけではありません(全体の事故数が減っているので相対的に増えていると見なすこともできますが、一方で、高齢者の免許保有が増加していることも考慮しなければなりません)。しかしながら、加齢によって認知能力が下がるのは事実ですから、横ばいだからといって対策をしなくてもよいという理屈にはならないでしょう。

ここで重要なのは、いわゆる認知症によって事故が発生しているとは限らないという現実です。

今回の事故のように、認知機能検査ではまったく問題なかった人が事故を起こすケースが少なからずあります。そうなると、認知機能検査では運転能力の低下について十分に把握できないのではないかとの推測が成り立ちます。

 

実際、年齢が若い人でも、周囲の状況について認識する能力が欠けていると思われるケースがたくさんあり、そうだとすると、必ずしも高齢者に限った問題とは言えなくなります。

個人的な話ですが、ここ1か月の間に筆者は、上記について考えざるを得ない事例に連続して遭遇しています。