介護業界は人材不足が深刻化しているのに、要介護者は増え続けていくという厳しい現実。老老介護やヤングケアラーといった問題も顕在化していて、早急な対策が必要です。ただ、国や介護業界も手をこまねいているわけではありません。ICTの導入を進めたり、介護の仕事の魅力を広めて人材確保に奔走するなど、策を講じています。
①介護DXへの取り組み強化
介護業界では、介護記録やケアプラン作成などの事務作業の自動化、遠隔見守りシステムによる巡回の回数の削減、排泄や入浴、移動におけるロボットの活用などを進めています。介護施設ではこれまで入居者3人に対して最低1人以上の介護職員をつけることが義務付けられていましたが、これによって入居者3.3人に対して1人になりました。
排泄や入浴介助は、職員と利用者の双方が精神的にも肉体的にも苦痛を伴い、これが嫌で介護職を避ける人も少なくありません。利用者としても、異性に介助されるよりロボットの方が気も楽です。今後はあらゆるロボットが介護施設に導入されるかもしれません。
②介護職の処遇改善
介護職は仕事がきついにも関わらず、それに見合った給与が支払われていないというイメージが根強くあります。実際、介護職の平均月収は、他の職種に比べて6万円も低いという結果が。これを受けて厚生労働省では、介護の仕事の魅力を伝える「介護のしごと魅力発信等事業」を2018年度より行なっています。
2024年度は前年に引き続き、福祉とクリエイティブをテーマにしたWebマガジン「こここ」を運営するマガジンハウスをはじめ、楽天グループ(「生き方に寄り添うしごと」運営)、朝日新聞社(「これからのKAIGO」運営)などが実施団体に選ばれ、6年経ってようやく土壌が整ってきました。
それ以外にも、勤務時間を朝夕のみ、夜のみなど柔軟に設定したり、副業としての働き方を認める「介護現場における多様な働き方導入モデル事業」も実施。さらに2022年2月からは、介護職員の収入を3%程度(月額9000円)引き上げる措置を講じました。
③地域包括ケアシステムの構築
重度な要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、2025年を目途に、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の構築を推進しています。
介護現場の効率化と介護人材の獲得は国と介護施設に期待するとして、私たちはロボットなどの非人間を受け入れる心構えと介護予防の努力、また自分本位ではなく他人との共存も意識した生活を心がけることが必要になってくるのではないでしょうか。
今回挙げた問題は、将来的に本当に当てはまるかどうかはその時になってみないとわかりません。
ただ、どんなに状況が改善されたとしても、人の身体はそうそう変わりません。70代はある程度元気でも、80代、90代になると誰かの世話になりつつ高齢期を送ることになり、子どもや他人に頼ることが出てくるでしょう。その時1人だけに頼るのではなく、頼る相手を多く持つことが大切です。1人だけに負荷をかけないよう、今のうちから人とつながる努力も必要なのではないでしょうか。
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
イラスト/Sumi
編集/佐野倫子
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