淋しい本心
 

英玲奈は今日、とっても可愛かった。私の前ではいつもかたくなな何かを感じさせる子だったのに、浩二さんの前ではリラックスしているように見えた。にっこり笑うとほほに浮かび上がるえくぼを、今日は何度見ることができただろう。それは素晴らしいことではあるけれど。

浩二さんに対する嫉妬みたいなものに、私自身が一番、当惑していた。

娘を可愛いと思えない、なんてうそぶいていたけれど、どうやら私は長い間娘に「片思い」をしているような気がしてもやもやしていただけなのかも。

どこか冷めてこちらを見る彼女の目を、居心地が悪く感じていた。私が1番仲良くしたいと、生まれる前から願っていた待望の娘。私が小さかった頃、早逝したお母さんとしたかったことを、彼女とできたら。

そんなイメージを勝手に押し付けて、それが叶わないから、拗ねていたのかもしれない。母親なのに、なんて子どもっぽいんだろう。

恋人に心を許す英玲奈の笑顔を見て、私の存在が英玲奈のなかでいかにちっぽけだったかを突き付けられる。母として自信があったなら、こんなふうに思うはずがない。

その日は夜まで、私はふがいなさに、私はうまく笑うことができなかった。