首までが顔。パックも化粧水も首までのばす
定期的にするのは、パックとマッサージ、それにスチームでしょうか。スチームは、夏場は充分湿気もあるので主に冬、一週間に一度くらい、洗顔した後、洗面器に熱湯をはって五分間ほどその蒸気をあてるわけです。その後もう一度軽くすすいで、化粧水をパッティングします。蒸気が毛穴の奥まで入って汚れを浮かび上がらせ、肌に潤いを与えてくれます。
マッサージで、今のところ気に入っているのはマッサージとパックを同時にやってしまうというもの。毎日洗顔前、顔にのばして軽くマッサージしてから洗い流せば、パックの効果も得られるというものですが、これとは別に、私は一週間に一度くらい、資生堂のリバイタル・パックを使っています。
マッサージにしてもパックにしても、もちろん化粧水やクリームをつけるときも、必ず私は首までのばします。首というのは顔のすぐそばにあって、顔と同じようにいつも外気にさらされています。顔をいくら念入りに手入れしても、首にくっきりと深いシワがあっては、興ざめです。「首までが顔と思って、顔とまったく同じ手入れをなさい」と言われてからは、顔をマッサージするときはそのまま下まで手を動かし、パックをするときは首にもして、朝晩の化粧水やクリームもつけるようにしています。(小夜子の魅力学 1983年3月13日)
欠点を隠すのではなく、特徴や個性を生かすメイクを
私はよく、素顔を絶対に見せない、といわれますが、家ではもちろんノーメイクです。ただ、たとえ家から仕事場に向かう途中でも、モデルを職業としている以上、その意識は必要ではないかと思っています。ノーメイクという無防備なままで歩いたら、気持ちだって緩むし、するとどうしても姿勢や動作にも張りがなくなります。いつでも自分の一挙手一投足に気を配っていてこそ、仕事の場で思うままに動くことができるのではないでしょうか。とはいっても、もちろん仕事のときとふだんのときとはメイクアップも違います。
私のアイメイクアップは、日本人である私の目の長所を生かすように工夫したもの、細い切れ長の目をチャーミングに見せるようにしたものです。具体的にいうと、ファンデーションでベースをつくった後、目の上からこめかみにかけて明るいばら色を入れます。それから茶の濃淡のシャドーを目にそって切れ長に入れ、水で溶くタイプのアイラインを筆で描きます。
これが私のふだんのメイクアップ、いちばん私らしい方法です。仕事のときはもっと強くしますし、メイクアップアーチストによってもいろいろ変わります。
日本人は目が細いのが欠点と思いがちだけれど、それは欠点ではなく特徴だと思うのです。つけまつ毛をたくさんつけて西洋人風にするのでなく、その目に合わせてアイラインを引くほうがスッとした切れ長の目の個性が生かせると思います。頰紅にしても、白人は顔が細く頰が薄いから頰に入れますが、日本人は頰骨が高く頰がふっくらしているので、同じところに入れてもただの線にしかなりません。それよりも頰骨の上にブラッシュしたほうがいいのではないかしらとも思いました。日本人にいちばん合うメイクアップは、結局、日本人の昔からの化粧法ではないかということです。(小夜子の魅力学 1983年3月13日)
年齢の出る手こそ、日々の手入れで違ってくる
手にはその人の年齢や生活がにじみ出るといわれます。年をとるにつれて肉体が少しずつ衰えることは自然のなりゆきですし、よく働いた手はそれなりに美しいのですが、それでも、日ごろ手を大事にしているのといないのとでは、ずいぶん違うと思います。形の良し悪しにかかわらず、女でも男でも手入れのゆきとどいた清潔な手は、とても感じのよいものです。
私はといえば、忙しさにかまけてそれほど気をつけているほうではないのですが、ハンドクリームをつけたり、ビタミンEのオイルをすり込んだり、寝るときにガーゼの手袋をはめたりくらいはしています。これは外国のスーパーで買ったのですが、コットンでできた就寝用の手袋です。日本では画材屋さんなどに売っているようです。
ときたまゆっくりできる時間があるときなど、クリームをつけてマッサージをすることもあります。まず手にたっぷりとマッサージクリームをつけ、指を一本ずつらせん状に根元から先に向けてマッサージします。次に指の先を持ち一本ずつゆっくり回して軽くひっぱり、それから指をそらせます。(小夜子の魅力学 1983年3月13日)
新刊『この三日月の夜に』の発売を記念した展覧会が開催決定!
会期:2024年7月2日(火)〜7月7日(日)
開場時間:11:00〜20:00
会場:スパイラルガーデン(スパイラル1F)
東京都港区南青山 5-6-23 1F
入場料:無料
主催:株式会社 講談社
横須賀功光個展 「小夜子」
1984年に資生堂で発表された「小夜子」シリーズを展示。各イメージ、それぞれ1点のみ現存するヴィンデージプリントで観ることが出来る貴重な機会をぜひ。
会期:2024年6月13日(木)〜7月27日(土)
開場時間:11:00〜19:00(火曜〜土曜 、土曜は13:00〜14:00クローズ)
休廊日:日曜、月曜、祝日
会場:Akio Nagasawa Gallery Ginza
東京都中央区銀座4-9-5 銀昭ビル6F
<書籍紹介>
『この三日月の夜に』
山口小夜子・著 1870円(税込み) 講談社・刊
伝説のモデル・山口小夜子が生前に残したインタビューでの言葉を再編集。横須賀功光氏の残した圧倒的に美しい写真とともにつむぐ、唯一無二の一冊。
【目次】
1 港の見える丘から
2 黒髪、おかっぱのモデル
3 東洋の神秘と言われて
4 主役は服だから――「着る」という仕事
5 ふだん着のパリ
6 小夜子の魅力学・美容と健康
7 本、映画、舞台
8 生涯この道で
9 心が身体を着ている
10 自分を無にして
11 日本の美と着物
12 自由に、私らしく
撮影:横須賀功光
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