アプリへの登録は自分を商品棚に並べる感じ


そしてもう一つは、アプリに感じるハードルの高さ。なんか、アプリに登録するって、自分を商品棚に並べる、なんなら血統書を提出するような感覚があるんです。自分には問題がありません、と証明するような感じ。年齢、住んでいるエリア、職業、身長……など、「条件を開示」することから始まるんですよね。全部とまではいかなくても、大事な情報は大方開示する必要があると思います。他にも、年収や離婚歴はあるのか、結婚願望があるか、子どもは欲しいのかというところも早い段階で探り合うのではないでしょうか。好きになった人がタイプ、とかじゃなくて、条件で人を好きになる。条件が合わなければ初めから対象外。そんな「条件先行型」だと思います。
 

 


アプリじゃない、いわゆるオーガニックな出会いの場合、「好きになる」ということが初めに起きて、そのあとに条件を知っていく、擦り合わせていく、みたいな部分があると思うんです。お互い「好きになってしまったから」という“エクスキューズ”があるから、例えば年収が低い、実はバツイチだった、子どもは欲しくない主義だった、親の介護をしている、持病があったといった事情が後々わかったとしても、受け入れていく、歩み寄っていく、協力する方法を考えるというステップに進むと思います。例えば、交際を深めた後に、相手が妊娠できない身体であることがわかったとすれば、子どもがいない人生を考えるとか、養子縁組するとか、そういった話し合いをしていきますよね。もちろんアプリでもそうなる可能性は十分ありますが、そもそもスタートが「条件」で選んでいるので、ブライダルチェックなどをして条件が合わなかったら別れる、みたいな選択になりかねないのがアプリの出会いだな、と思います。

まるで血統書の提示が求められるみたい...結局恋愛強者に有利?マッチングアプリが主流社会でこぼれおちる人たち_img0
 


情報の開示が命! 後出しは契約違反?


そして、アプリで出会った場合、親の介護をする必要がある、持病があるなど、重めの事情も、交際を始める前に伝える必要があるかもしれません。とにかく、アプリは条件を開示して、恋人の候補に自ら立候補するのですから、問題なし! ということを証明しないといけません。ゆっくり関係性を築いてから伝えるというスタイルだと、「後出し」「じゃあなんでアプリ始めたの」って責められる気がします。もちろんそれは人によるとしても、なんとなく気持ちとして、「自分から情報を開示して立候補した」ということで明確な責任が生じるような気がします。アプリに登録した時点で、「はい!」と立候補し、自ら土俵にあがったようなもの。自分の成分表を書いて、「売り物」として欠陥がないことを証明する。そして、値段を付ける。例えば、メルカリで買った中古の服に、記載されていないシミや穴があったら、クレームを入れたくなりますよね。だからあらかじめ、ここに傷がありますとかを書かないといけない。アプリも同じです。