知的な問題があるがゆえにセーフティーネットに繋がれない
そして、明らかに知的な問題を抱えた受刑者が多いのだそう。
大ベストセラーとなった宮口幸治著『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)でも、正確な統計はないものの、受刑者の軽度知的障害者や境界知能(知的障害ではないけれど、知能指数(I Q)が一般より低い70~84に位置する人)の人たちの割合は一般より高いと推測されると記されています。医療少年院に入所する少年の特徴として
・簡単な足し算や引き算ができない
・漢字が読めない
・簡単な図形を写せない
・短い文章すら復唱できない
『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)より引用
があげられるといいます。
障害年金や生活保護というセーフティーネットは形としては存在するけれど、申請の要件を理解し、煩雑な手続きを踏むのはとてもハードルが高く、知的な問題がある場合、書類の内容を理解することも難しいこともあります。それができないから、安いものを盗んでつかまり、出所してはまた安いものを盗む、を繰り返す人もいるのだといいます。また、知的障害のある女性の場合、パンやお菓子をくれるからと性行為におよんでしまう人もいるそう。売春と言われても、一体それの何が悪いのか、本人がわからないのです。
何が悪いのかわからないまま刑務所に送られてくる。なかにはここが刑務所か留置場か、はたまた病院かもわかっていない者すらいる。そうした者に対して、果たして矯正教育の意味はどれほどあるのだろうか。
『プリズン・ドクター』(新潮社)より引用
長い文章が理解できない、用語がわからないといった場合もあるでしょう。更生させようにも、そもそも物事の善悪が理解できないと話は始まりません。
明らかに支援が必要な場合でも、義務教育の中で見過ごされてしまい、そのまま社会に出たとき、仕事はもちろん、日常生活にも大きな支障が出るでしょう。私たちは普通に生活するだけで、無意識の中で知能をフル活用しています。それが乏しい場合、私たちが想像もできないようなあらゆる困難に陥るのだと思います。
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