フリーアナウンサーの住吉美紀さんが50代の入り口に立って始めた、「暮らしと人生の棚おろし」を綴ります。

「自分らしく働くためのトライ&エラー」を経て、天命の仕事に行き着くまで【50代の棚おろし・住吉美紀】_img0
 

自分で、仕事人間だと思う。社会人になって今年で29年目、これまでを振り返っても、量・質共に、実によく働いてきた。寝る時間、食べる時間を惜しんで仕事に没頭した時期もある。フリーランスになった今は仕事のことを完全に忘れる瞬間はほぼなく、もはや脳のOSに組み込まれたかのように、常に思考の底辺に仕事のことがある。

今の働き方からすると前時代的かもしれない。しかし、自分自身で選び、納得してきたのなら、そんな働き方もアリだと思うのだ。それが自分らしい生き方に繋がるのなら。実際、仕事に捧げてきた分だけ、多様な人生経験や知見を得てきた。達成感や楽しさ、感動など大事な感情も、仕事の中でたくさん味わってきた。

「自分らしく働くためのトライ&エラー」を経て、天命の仕事に行き着くまで【50代の棚おろし・住吉美紀】_img1
30歳から携わった番組『世界遺産の旅』の2年目、ウィーンのシェーンブルン宮殿からの生中継が無事に終わった笑顔。一緒に旅をしたのはドイツ文学者、故・池内紀さん。池内さんの文化解説が素晴らしかった。

NHKにアナウンサーとして就職したのが、社会人としての出発だった。しかし、アナウンサーになりたいなんて、就職活動の直前まで考えたこともなかった。

そもそも大学時代は社会人になること自体「毎朝同じ時間に起きて、同じところに通い、一日8時間労働をする毎日がずっと続き、ズル休みもできない上、それで生活していけるくらいのお金を稼がないといけないなんて、果たして私にできるのだろうか」と正直、不安しかなかった。そこで、大学時代はなるべく色々なアルバイトをしてみて、自分に合う、ずっと続けられそうなことはあるのか、トライアンドエラーをしてみようと決めた。

 


最初は、幼い頃から自分にとっての「働く大人のデフォルト」だった、スーパーのレジからはじめた。その後、デパ地下の試食販売、デパートのお歳暮包装、英語の家庭教師、飲食店スタッフ、雑誌ライターの助手、英/日翻訳など、興味があるバイトは次々にしてみた。環境NGOでボランティアや、大学の米国研究旅行で英/日通訳の役割なども買って出た。