裏社会の男になった、傷だらけのソン・ジュンギ。「悪いジュンギ」に痺れた韓国映画『このろくでもない世界で』

ソン・ジュンギ出演の韓国映画『このろくでもない世界で』が7月26日（金）より全国公開。

当記事では、韓国ドラマライター・小澤サチエが、本作品の魅力を語ります。

『このろくでもない世界で』は、カンヌ国際映画祭や釜山国際映画祭に公式出品され、百想芸術大賞で4部門ノミネートされ、キム・ヒョンソが見事新人演技賞を受賞した注目の作品です。

大人気俳優のソン・ジュンギが韓国ノワール映画に挑戦。これまでのイメージを大きく覆し、裏社会に生きる男を熱演したことで話題になりました。

『このろくでもない世界で』のあらすじは……

継父のDVに怯える18歳のヨンギュ（ホン・サビン）は、義理の妹ハヤン（キム・ヒョンソ）を守るために暴力沙汰を起こして高校を停学、その上、示談金を求められる。生き抜く術のないヨンギュは、地元の犯罪組織のリーダー、チゴン（ソン・ジュンギ）の門戸を叩くほかなかった。仕事という名の“盗み”を働き、徐々に憧れのチゴンに認められていくが、ある日、組織の非情な掟に背いてしまい……。

このろくでもない世界で、ほんの一瞬でも彼らに陽が注ぐことはあるのだろうか？

「あのソン・ジュンギが……！」傷だらけのジュンギに痺れる！

最近は、演技派俳優としてさまざまな作品に挑戦を続けているソン・ジュンギ。

韓国映画『ロ・ギワン』では、脱北者役で体当たり演技を見せてくれましたが、『このろくでもない世界で』でも新たな魅力に触れることができます。

本作でソン・ジュンギが演じるのは、犯罪組織の孤独なリーダー・チゴン。従来のソン・ジュンギのイメージから大幅にかけ離れた、「裏社会の兄貴」を演じる姿がとても新鮮です。

劇中では、傷だらけの筋肉ムキムキの肉体も披露。「あの童顔でつるんとしたお肌のジュンギが……！」と相当な衝撃を受けましたが、これまで見たことのないワイルドさに痺れます。“悪いジュンギ”もとんでもなくカッコいい！　

しかし単なる裏社会の男ではなく、冷酷さの奥に寂しさと情の深さを感じさせ、繊細な演技に惹きつけられます。

父親のDVに苦しむ少年と、父親から愛されなかった男の運命は……

『このろくでもない世界で』は、継父からの暴力と貧困に喘ぐ18歳の少年ヨンギュと、そんな彼にかつての自分を重ねた裏社会の男チゴンの物語。舞台となっているのは、貧困と暴力が蔓延るとある地方の町です。

ヨンギュとチゴンの共通点は、救いようのないこの町で生まれ育ち、家庭環境に恵まれず、父親の愛にも触れることなく生きてきたこと。

継父の暴力に耐えながら暮らすヨンギュの人生も壮絶ですが、組織のリーダー・チゴンも、実はとても悲しい過去を背負っています。チゴンの耳に入った深い切り込みのような傷には、父親の愛を求めながらも、愛されずに育ったチゴンの悲しい事情が……。

孤独なチゴンは、ヨンギュに過去の自分を重ねていきます。そうして生まれた情は、血のつながりを超えた絆へと変わり、時に組織の厳格な掟さえも覆すほどチゴンはヨンギュに目をかけていくのです。