上司の暴走が「軽躁状態」だったとしたらかなり危険

「根性論を振りかざす上司」は現実逃避、「言われたことしかしない若手社員」は傷つきたくないだけ!?職場を腐らせる人の真の姿に迫る_img0
 

さらに、その上司が暴走気味になってしまうのは、「マニック・ディフェンス(manic defense)」という心のメカニズムが働いているのではないかと片田さんは指摘します。

マニック・ディフェンスとは、困難な事態に直面したとき、気分を高揚させて元気を出し、活動性を高めることによって乗り越えようとする防衛機制のこと。部下を叱咤激励したり、自慢話で多弁になったり、電話をかけまくったり取引先に頻繁に行ったりして多動になるのは、その表れといえるかもしれません。

 

ただ、マニック・ディフェンスは誰でも用いる防衛手段であり、必ずしも病的ではないのだそう。片田さんが問題視しているのは、マニック・ディフェンスの結果、「軽躁状態(hypomanic state)」に陥ってしまうことでした。

「軽躁状態は文字通り軽い躁状態であり、本人も周囲もそれほど困らない。むしろ、本人としては調子がよく、仕事も家事もどんどんはかどるので、本人も周囲も軽躁状態を病的な状態と認識することはまずない。つまり、自分が病気であるという自覚、『病識』を持ちにくい状態なのだが、その分暴走しやすいともいえる」

では「本人も周囲もそれほど困らない」という軽躁状態のいったい何が問題なのか? 片田さんは具体例を挙げてその怖さを説明しています。

「マニック・ディフェンスによって軽躁状態になりやすいのは、目の前の現実を直視したくなくて現実から逃避しがちな人である。だから、自分の現在の状態をきちんと見つめて把握し、気分が高揚しすぎて多弁・多動になっていると自覚することなど到底できない。その結果、不正行為に手を染める上司もいる。某保険会社で、日々部下を叱咤激励し、自分も営業電話をかけまくり、気合と根性の重要性を延々と説いていた50代の営業部長が運転免許証や保険証などの本人確認書類を偽造して、保険契約を捏造していたことが発覚した」

ここまで重症ではないにせよ、現実を認識できない上司に対しては、できるだけ具体的な数字や根拠を提示し、「業界全体を見ても、こうなっている」「数字が落ちているのは長期的な傾向」などと一般的かつ客観的な意見として伝えるべきだと片田さんはアドバイスします。ただし、伝える際にはNGワードもあるそうなので、しっかり心に留めておきましょう。

「『あなたのやり方は現実的ではない』『あなたは現実を見ていない』などと口が裂けても言ってはいけない」