2時間の大音量ライブは実はアウト


一般的に難聴につながるレベルの騒音は、80デシベル前後またはそれ以上の音と考えられています。これは例えば、窓の開いた地下鉄の車内、居酒屋などでの人の大声、ピアノの音、カラオケ店内などが該当します。イヤホンやヘッドフォンでもこのボリュームは容易に超えることができます。あるいは、スポーツのイベントでは、平均81〜96デシベル、最大105〜124デシベルの音にさらされる可能性があります(参考文献3) 。また、ライブ音楽公演では、平均で112デシベル、最大で127デシベルの音が記録されています(参考文献4)

テレビや音楽のボリュームをつい上げがちな人は要注意!聴力と認知症との深い関係【老年医学専門医・山田悠史】_img0
写真:shutterstock

このような大きな音に長時間さらされると、徐々に聴力が低下していきます。例えば、大声や芝刈り機、スポーツイベントのような90デシベルの音なら1日に約2時間まで、95デシベルなら約1時間まで、100デシベルなら15分までと、音量が大きくなるほど許容される時間が短くなります(参考文献5)。これは、2時間のライブに参加してしまえば、あっという間に許容範囲を超えるということを意味しています。ライブでなくても同様の音量をイヤホンから出していれば同じことです。
さらに、120〜155デシベルを超えるような大音量では、ごく短時間でも重度から高度の難聴を引き起こす可能性があります。
 

 


難聴は、認知症リスクを増やす可能性が最も高い


このように、実は日常生活のさまざまな場面で私たちは大きな音にさらされており、それが積み重なることで徐々に、または突発的な大音量によって急激に、耳の聞こえが悪化する可能性があるのです。
大きな音が聴力の低下につながるメカニズムとして、大きな音が耳の奥の内耳と呼ばれる場所にもたらす直接的なダメージが報告されています(参考文献6)。また、耳の中で、大音量にさらされた後にはさまざまな代謝の変化も起こり、それが間接的に音を感知する細胞を傷つけてしまうことも報告されています。

では、なぜここで耳の話をしているのかといえば、実はこの難聴が、認知症のリスク要因の中で、人口レベルでは最も大きな影響を示していると考えられているからです(参考文献7)。難聴は、加齢や他の要因と独立して認知症リスクを最も増やす可能性が高いのです。