世界最高峰の老年医学科で働く山田悠史医師が、脳の老化と認知症の進行を遅らせるために「本当に必要なこと」「まったく必要でないこと」を伝えます。

毎日の晩酌は缶ビール1本?2本?その差が将来の認知症の分かれ目に!韓国人400万人の飲酒量調査からわかったこと【山田悠史医師】_img0
 

山田 悠史
米国内科・老年医学専門医。慶應義塾大学医学部を卒業後、日本全国の総合診療科で勤務。新型コロナ専門病棟等を経て、現在は、米国ニューヨークのマウントサイナイ医科大学老年医学科で高齢者診療に従事する。フジテレビ「ライブニュースα」レギュラーコメンテーター、「NewsPicks」公式コメンテーター(プロピッカー)。カンボジアではNPO法人APSARA総合診療医学会の常務理事として活動。著書に、『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』『健康の大疑問』(マガジンハウス)など。
X:@YujiY0402
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毎日の晩酌が脳に与える影響


「今日も一日お疲れさま。」そう言って、いつものように缶ビールの蓋を開ける。
晩酌の時間は、もしかすると多くの人にとって、一日の疲れを癒す大切な儀式になっているかもしれません。しかし、自分の手元のビールにふと目を落とし、毎日の晩酌が将来の自分にどんな影響を与えるのかを考えることはほとんどないでしょう。

日々、当たり前のように楽しんでいる晩酌。仕事のストレス解消や、同僚との付き合い、家でのリラックスタイム。アルコールは現代の働く世代の生活に深く根付いています。しかし、この習慣は私たちの脳にどのような影響を及ぼすのでしょうか? ここでは、それについて掘り下げて考えてみましょう。

毎日の晩酌は缶ビール1本?2本?その差が将来の認知症の分かれ目に!韓国人400万人の飲酒量調査からわかったこと【山田悠史医師】_img1
写真:Shutterstock

過去の研究によると、週に約168グラム以上のアルコールを摂取する人は、それより少ない量を飲む人と比べて、認知症のリスクが約18%高くなるそうです(参考文献1)。これでは少し分かりにくいので、アルコールの量を晩酌でよく飲まれる缶ビール(350ml)や缶チューハイに換算してみましょう。すると、1日あたり約2缶以上飲む人が「週に約168グラム以上のアルコールを摂取する人」に該当する、ということになります。

さらに、別の大規模な研究でも、1日にビール2缶以上の飲酒をする人はそれより少ない人と比べて、認知症リスクが約22%高くなることが示されています(参考文献2)。また、この研究の中で、 気を失うような飲み方をする人は、平均の飲酒量は少なくても認知症リスクが約2倍に高まることも示唆されています。つまり、毎日の晩酌で缶ビールを2缶以上飲む習慣がある人、あるいはそれ以下の飲酒でも時々深酒をしてしまう人は、将来の認知症リスクが高まる可能性があることになります。