常識をすべてひっくり返さなければ、生きていけなかった

人脈ゼロ・語学力ゼロでモナコに移住。専業主婦だった女性が、50歳から「手放したもの」とは?_img0
フランスのマルセイユにある、マルセイユ・サン・シャルル駅前で。

人と違う選択をすると、誰かに陰口を言われることもあります。面と向かって直接言われることはめったにありませんが、「あの人がこう言っていたわよ」と、親切なのかおせっかいなのか、わざわざ教えてくれる友人やご近所さんがいたりします。

陰口を言っていたのが、仲がいいと思っていた人であれば、なおさらショックが大きいかもしれません。そして、周囲の目を気にするあまり、言動もだんだん縮こまっていってしまいます。

私は三重県の出身で、実家では祖母と父が会社を経営していました。そのため、家では小さい頃からしつけが厳しく、「ご近所さんや世間様が見ているから、いい子でいなさい」と口を酸っぱくして言われていました。

結婚した夫は、地元の眼科医。私はそこでも、いい妻、いい母を演じることに必死になりました。人生が100年あるとしたら、半分は「人目を気にする人生」を送ってきたように思います。

しかし、医師であった夫が急逝し、私自身の人生を歩む必要に迫られたとき、今までの自分の中の常識をすべてひっくり返さなければなりませんでした。病院を閉院して、子どもたちも育てていかなければなりません。人目を気にしている余裕なんて私にはない。いちいち過去を振り返っていては、あっという間に人生が「詰んでしまう」と感じていたのです。

 


あなたが乗った列車が発車していれば、その陰口は聞こえません


夫が亡くなり、がむしゃらにひた走っていたときに、ふと気づいたことがあります。それは、過去を振り返らず常に未来志向でいることで、周囲の「陰口」が耳に入らなくなったことです。

私が乗って動かしている人生の列車は、陰口を言う人たちがいた駅をいつの間にか発車していて、その声の届かないところにまで来たのだ。そう実感しました。

無謀な挑戦をしようとするとき、常識はずれの道を歩もうとするとき、はじめは周囲の人たちの声が胸に刺さるかもしれません。「なんてことをしようとしているの?」「旦那さんや子どもがかわいそう」「絶対に成功できっこないのに」——。

それでも、あなたはあなたの列車に迷わず乗り込んで運転してほしい。荷物を全部詰め込めなくても、誰一人見送りに来なくても。

その列車は人生で一度きりしかやってこないかもしれない。今を逃したら、もう二度と乗車券は手にすることはできないかもしれない。そう考えてみてほしいのです。

あなたが動かす列車は常に前に進み続けます。列車が出発してしまったら、あの煩わしい陰口が、あなたの耳に届くことはすっかりなくなるのです。