また、塩分を控えることの効果は、年齢が上がれば上がるほど大きくなる可能性があり、加齢に伴う血圧上昇を抑制する効果も知られています。実際、多くの研究が、塩分制限が若者よりも高齢な世代になればなるほど、より大きな血圧低下効果をもたらすことを示しています。

例えばある研究では、血圧が正常の人が塩分制限をすると、45歳以下では3.7mmHgの血圧低下が見られた一方、45歳以上では7mmHgの血圧低下が観察されました(参考文献6)。また、子どもやより若い世代の成人でも、血圧低下の幅はそれより小さいものの、塩分を減らすことで高血圧の発症を遅らせたり、予防したりする可能性があるとされています(参考文献7)

こうした知見は、日頃から塩分を摂取する量が、あなたが高血圧を持つリスクと密接に関連し、さらにそのリスクは塩分制限をすることで下げられる可能性があることを示しています。醤油を減塩醤油にする価値は十分あるというわけです。

そしてここからが本題ですが、この高血圧が認知症リスクと密接に関連するようなのです。実際、高血圧がさまざまな種類の認知症、例えばアルツハイマー型認知症や、血管性認知症のリスクを高めることが明らかになっています(参考文献8)

「塩分と認知症」刺身には醤油たっぷり、味噌汁は濃いめ、漬け物大好きなら要注意!【医師・山田悠史】_img0
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また、興味深いことに、高血圧と認知症の関係は、年齢によっても異なる可能性があります。20~50歳代では、一貫して高血圧が認知症リスクを高めるという関係性が見られていますが、より高齢世代における高血圧と認知症の関係はやや複雑です。ある研究では、高齢者でも高血圧が認知症リスクを高める可能性が示唆されていますが、一方で認知症を発症する人は、そうでない人よりも血圧が低い傾向を示すと指摘する研究もあり、科学的な根拠という意味では混在しています(参考文献9,10)。このため、「少なくとも働き盛りの間は血圧を気をつけておく必要がある」という捉え方が必要なのかもしれません。
 

 


では、逆に血圧を下げると認知症リスクは減らせるのでしょうか? この点についても、いくつか研究結果が報告されています。