世界最高峰の老年医学科で働く山田悠史医師が、脳の老化と認知症の進行を遅らせるために「本当に必要なこと」「まったく必要でないこと」を伝えます。
山田 悠史
米国内科・老年医学専門医。慶應義塾大学医学部を卒業後、日本全国の総合診療科で勤務。新型コロナ専門病棟等を経て、現在は、米国ニューヨークのマウントサイナイ医科大学老年医学科で高齢者診療に従事する。フジテレビ「ライブニュースα」レギュラーコメンテーター、「NewsPicks」公式コメンテーター(プロピッカー)。カンボジアではNPO法人APSARA総合診療医学会の常務理事として活動。著書に、『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』、『健康の大疑問』(マガジンハウス)など。
X:@YujiY0402
Podcast:山田悠史「医者のいらないラジオ」
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スマートフォンが目にもたらす影響
スマートフォンはもはや世代を超えて、あらゆる人に身近なものになりました。子どもや高齢者がスマートフォンを操っている姿を見かけるのも珍しくありません。
場合によっては、もはや依存症かも? と思えるような頻度でスマートフォンを触る人もいるかもしれません。かくいう私も、仕事の連絡や本を書くのに参考にする論文を読むのにもスマートフォンを使っていて、生活に欠かせないものとなっています。
しかし、そうした間にスマートフォンが私たちの体にどのような影響をもたらすのかを考えることはあまり多くないでしょう。
スマートフォンは実際のところ、いくつかの目の問題を引き起こすことが知られています。その一つが、一時的な失明です。これは通常、暗い部屋でスマートフォンを操作していることによって起こる失明で、特に、片方の目だけで見る状況で起こることが知られています(参考文献1)。例えば、夜寝る前に枕もとでスマートフォンを見ることはないでしょうか? 横向きになってスマートフォンを眺める場合、片方の目は枕によって閉ざされたままかもしれません。そのような状況ではスマートフォンを見ている方の目が光に慣れる一方で、見ていない方の目が暗闇に慣れることで、その後スマートフォンを見ていた目が暗闇に適応できなくなり、一時的に失明のような状態が生じるというものです。
これは一時的な現象なのでまだ良いかもしれませんが、そのほかにも、スマートフォンの使いすぎは近視との関連が知られています(参考文献2)。さらに、スマートフォンの放つブルーライトが目に及ぼす影響はまだわかっていないことも多く残されていますが、目のその他の健康問題につながることも懸念されています。
紫外線、喫煙、飲酒、コンタクトの誤用が目の健康の妨げに
日常生活において、目の健康に影響を及ぼす生活習慣はスマートフォンに限られたものでもありません。例えば、紫外線を浴びること、喫煙、飲酒といった習慣は白内障のリスクになり(参考文献3)、高血圧や糖尿病といった生活習慣に密接に関連した病気は緑内障のリスクになることが知られています(参考文献4,5)。あるいは、コンタクトレンズを使用される方は、その間違った使用により、さまざまな目の合併症のリスクと関連してしまうことがあります。感染症を含む一部の合併症は、失明に繋がる場合もあるのです。
このように、実は日常生活の中には、目の健康に悪影響を及ぼす習慣がたくさんあります。にもかかわらず、おそらく私たちの多くは普段、目が見えるということが当たり前すぎて、目の健康について気を配るということは少ないかもしれません。目を休めるために、スマートフォンから離れる時間を作ったり、外出前に紫外線から目を守る方法を考えたりすることがどれほどあるでしょうか。
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