世界最高峰の老年医学科で働く山田悠史医師が、脳の老化と認知症の進行を遅らせるために「本当に必要なこと」「まったく必要でないこと」を伝えます。
山田 悠史
米国内科・老年医学専門医。慶應義塾大学医学部を卒業後、日本全国の総合診療科で勤務。新型コロナ専門病棟等を経て、現在は、米国ニューヨークのマウントサイナイ医科大学老年医学科で高齢者診療に従事する。フジテレビ「ライブニュースα」レギュラーコメンテーター、「NewsPicks」公式コメンテーター(プロピッカー)。カンボジアではNPO法人APSARA総合診療医学会の常務理事として活動。著書に、『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』、『健康の大疑問』(マガジンハウス)など。
X:@YujiY0402
Podcast:山田悠史「医者のいらないラジオ」
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砂糖入り飲料を飲む人と飲まない人の大きな違い
あなたは暑い日に冷たい清涼飲料水を飲むのが好きかもしれません。水や緑茶ばかりでは飽きてしまうので、ソーダやジュースを選ぶこともあるでしょう。
かくいう私も、生粋のスイーツ男子であり、清涼飲料水はあまり飲まないものの、代わりにコーヒーと相性ピッタリなスイーツを愛して止まないので、胃の中では砂糖入りのコーヒーを飲んでいるのと同じ、本当は甘い物と健康なんていう題材の文章すら書きたくないと思いながらも、残念ながら目を瞑るわけにもいかないので、これを書いています。
砂糖入りの清涼飲料水は、あらためて言うまでもないかもしれませんが、私たちの健康に大きな影響を与える可能性があります。多くの研究が、そうした飲み物と糖尿病のリスクの関連を指摘しています。
ある大規模な研究では、砂糖入り飲料の摂取が多い女性は、そうでない女性と比べて2型糖尿病を発症するリスクが83%も高くなることが報告されています。具体的には、1日に1本以上の砂糖入り清涼飲料水を飲む女性は、月に1本未満しか飲まない女性と比べて、糖尿病発症リスクが1.83倍になると報告をされています(参考文献1)。
同じような結果は、4万人近い人が対象となった別の研究でも確認されています。この研究では、砂糖入り清涼飲料水を飲む量を増やしていくと、糖尿病の発症リスクが1日1本あたり18%ずつ増えていくことが示されました(参考文献2)。清涼飲料水は飲む量が多くなればなるほどリスクが高くなるというわけです。
カロリーゼロの人工甘味料でも関係なし!
また、同様のリスク増加は、残念ながら人工甘味料を用いた「カロリーゼロ」の飲み物や「健康に良い」はずの果物のジュースでも見られており、人工甘味料や果物のジュースが糖尿病リスクという意味では良い置き換えにならない可能性も指摘されています(参考文献2)。「カロリーゼロ」スイーツも封じられてしまい、もうスイーツ男子の私には逃げ場がないというわけです。
清涼飲料水が糖尿病を導く理由は様々に考えられていますが、中でも、体重増加が最も重要な要因である可能性が高いようです。先述の研究でも、調査期間中に清涼飲料水の摂取量を増やした女性は、摂取量が変わらなかった女性と比べて、より大きな体重増加を経験しています(参考文献1)。これは、甘い飲み物による糖尿病リスク上昇の主なメカニズムが体重増加である可能性を示唆していると言ってよいでしょう。
そして、なぜここで糖尿病リスクを話題にするかと言えば、もうお気づきかもしれませんが、糖尿病もまた、認知症の大きな要因の一つであると考えられているからです。
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