宿題廃止を歓迎している保護者の中には、子どもの自主性を高めたいと考えている人もいるでしょうが、そうではなく、夏休みの間、塾にみっちり通わせ、受験を有利に進めたいと考えている人もいるはずです。こうした保護者にとっては、単純作業をこなさなければならない学校の宿題は邪魔なものと映っていることでしょう。

宿題がなくなれば全ての時間を塾の勉強に充てることができますから、学力向上が期待できます。一方で、そのような環境にない子どもの場合、宿題すら課されないということになると、夏休み中には何もしないことになってしまいます。

【夏休みの宿題廃止】教員の負荷軽減?子どもの自主性?「減らす流れ」の前に考えるべきこと_img0
 

近年の日本では、自主性や個性を育む教育が進んでいるとはいえ、ペーパー試験の結果が良くなければ、いわゆる高い偏差値の学校には入りにくいのもまた事実です。夏休み期間中に何もしなかった児童生徒と、家庭環境の助けを借りて塾などに通った児童生徒とでは、学力に差が付きそうです。
 

 


最終的に夏休みの宿題をどう扱うべきなのかについては、議論を繰り返しながら最適解を見つけていくしかありませんが、最も大事なのは、なぜ宿題をなくすのかという論点をはっきりさせることでしょう。

教員の負荷軽減と、自主性や創造力の育成、塾に行く時間の確保、を比較すると、同じ宿題の廃止でも、その意味するところはまったく異なります。

夏休みの宿題が廃止あるいは軽減される背景には様々な理由や思惑があり、明確な社会的コンセンサスは得られていません。このあたりを曖昧にしたまま、なし崩し的に宿題をなくしてしまっては、あまりよい結果にはならないでしょう。
 

写真・イラスト/Shutterstock

 
【夏休みの宿題廃止】教員の負荷軽減?子どもの自主性?「減らす流れ」の前に考えるべきこと_img1

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