私たちは「傷つき方」を知らなかった
私たちは、小さいころから今に至るまで、学校でも、職場でも、家庭でも、正しい傷つき方を学んでこなかったのではないでしょうか。実際、あるリーダーは「つらいときの心の処理方法を学んでいない。だからつらい」ともらします。
柔道や合気道などの武道を始めると、まず、受け身を練習します。相手から攻撃された際に、体へのダメージを回避するために、素早く自ら倒れ、受け身をとります。その際、床との衝撃を柔らかく、逃がすようにするのがコツです。攻撃に対して無理に抵抗していると、相手の力をすべて受けてしまい、大けがをしてしまいます。
そうならないように、自分から倒れにいき、相手の攻撃を巧みに最小化し、自分の安全を確保します。受け身は大切です。これが武道家の常識です。
ひるがえって、リーダーのみなさんは心の受け身を練習しているでしょうか。
思いやりという手袋で、心の痛みに柔らかく触る
リーダーは、心にさまざまな攻撃を四六時中、受けます。武道家の観点から考えれば、心の受け身を知らずして、日々、戦いに挑んでいるとしたら、これほど恐ろしいことはないはずです。
そう、私たちは、心の傷に対してあまりにも無防備だったことに気づかされます。これではボコボコに傷ついてしまい、つらくて当然です。でも、もう大丈夫です。
セルフ・コンパッションとは、心の受け身であり、正しい傷つき方のことだからです。正しく傷つくには、痛みを避けたり、抵抗したりするのではなく、痛みに触れることが鍵となります。痛みに触れるのはだれでもイヤなものです。
だからこそ、自分への思いやりという手袋で、心の痛みに柔らかく触るというアプローチを採用するわけです。そうすることで、ポジティブな感情もネガティブな感情もすべて感じられるようになります。
強いリーダーを目指すために、感情を感じる回路をシャットダウンし、無機質で、無慈悲なリーダーになる必要はありません。セルフ・コンパッションを活用して、より人間らしいリーダーになることを本書は提案しているのです。
それでは、早速エクササイズを試し、心の受け身を実践してみましょう。
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