バックドラフトについても知っておく

リーダーこそ「自分にやさしく」しよう! 傷つきやすい管理職の「セルフ・コンパッション」という処方箋_img0
写真:shutterstock

最後に、バックドラフトという、とても重要な症状について触れたいと思います。バックドラフトとは、セルフ・コンパッションを実践したときに生じるイヤな感覚のことです。

セルフ・コンパッションを取り入れれば、たしかにポジティブに心が整うのですが、その回復の途中で、イヤな気持ちが湧き起こることがあるのです。このことを知らないと、セルフ・コンパッションの練習中にびっくりしてしまったり、効果がないと思ったりするかもしれません。

バックドラフトが全員に起きるわけではないですが、こういうことが起こりうることを知っていただくとよいでしょう。

たとえば、「よくやったね」と言葉をかけたとしましょう。このときに、心がザワザワする場合があります。なぜでしょうか。それは、「よくやったね」と語りかけたときに、自分にやさしくできなかった過去の苦い体験が浮かび上がってくるからです。自分を責め続けた、あの頃の記憶がよみがえり、不快な気持ちになるのです。

 


隠れていた痛みが顔を出したらひと休み

今まで見て見ぬふりをしていたネガティブな感情が、表に出てくることもあります。
では、これは悪いことでしょうか。いえ、そのようなことはありません。バックドラフトは自分を整える重要なステップなのです。

たとえば、寒い日に、外に長くいると、手が寒さで麻痺してきますね。暖かい部屋に入り、手がだんだんと温まってくると、手がジーンとしびれるように感じられるときがあります。そのようなしびれるような、痛いような感覚を経て、手の感覚が戻ってくるのです。

心の痛みも同じです。セルフ・コンパッションで心が温められると、隠れていた痛みがひょっこりと顔を出し、一時的に、イヤな気持ちになることがあります。バックドラフトが起きたら、ひとまず、エクササイズをいったんひと休みして、無理をしないようにしましょう。

リーダーこそ「自分にやさしく」しよう! 傷つきやすい管理職の「セルフ・コンパッション」という処方箋_img1
 

『すぐれたリーダーほど自分にやさしい 疲れ切らずに活躍するセルフ・コンパッションの技術』
著者:若杉忠弘 かんき出版 1760円

「売上アップ」「生産性向上」「部下指導」「パワハラ対策」「人員減少」「業務山積み」。さまざまな課題を抱える職場のリーダーたちは、今まさに過酷な状況に置かれています。もっと自分が頑張らなければと必死になって働き、心身ともに疲れ切ってしまう前に取り入れたいのが、「セルフ・コンパッション」というスキル。Googleなどのグローバル企業でも注目される「自分にやさしくする」ための技術とは? グロービス経営大学院教授の著者が丁寧に解説します。

写真/Shutterstock
構成/金澤英恵

前回記事
「終末期の患者さんが「後悔すること」から見えてくる、「幸せに逝く」ために必要な4つの準備」>>

リーダーこそ「自分にやさしく」しよう! 傷つきやすい管理職の「セルフ・コンパッション」という処方箋_img2