ウソ?ホント?猛暑対策・熱中症対策の常識を検証!


猛暑対策や熱中症対策などでよくいわれている常識や定説は果たして本当なのか? これらの「あるある」を、最新の研究報告をもとに検証します!

①カフェインを飲むと脱水が起こりやすい?

カフェインには、利尿作用があるため、夏場にコーヒーを飲みすぎると、脱水が進んでしまうのではないかと考える人もいるようです。しかし、数多くの研究成果によって、カフェインの利尿作用のせいで、脱水が著しく進行することはないと結論づけられています。

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②熱中症の対処では脇を冷やす?

重度の熱中症が疑われる場合には、短時間で深部体温を39℃以下に下げることが最も重要。そのためには、カラダの大部分を冷水に浸ける方法が最も有効です。カラダの一部を冷やす方法 (脇、首、手のひら)では、急激に深部体温を冷やすことはできないので、可能な限り広範囲を冷やしましょう。

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③暑いときには熱いものを食べる?

昔から「真夏の暑い日に熱いものを食べると夏バテしない」などとよくいわれます。暑いときに熱いものを食べると、汗をかくことがありますが、たしかに汗が蒸発すると体温が下がります。しかし、同時に熱い食べものの熱がカラダに流入するので、結果的に大きく体温を下げることはないと思います。

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④猛暑のときは必ず帽子を被る?

帽子を被ることで、頭に対する太陽の輻射熱の影響を抑える効果はありますが、帽子内の温度や湿度が上がると、逆に熱放散を妨げることになります。帽子を被ったからといって、深部体温が大きく下がるような効果は期待できないでしょう。帽子が蒸れて不快感が強くなる場合は、外してもよいと思います。

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著者プロフィール
藤井直人(ふじい なおと)さん

筑波大学 体育系 助教。博士(学術)。専門分野は運動生理学。1981年6月24日大阪府生まれ。筑波大学体育専門学群卒業。大学在学中は陸上競技部に所属。その経験を活かし、運動時の呼吸・循環・体温調節に関する運動生理学的研究を数多く行っている。さらに筑波大学体育系の特色を活かし、競技パフォーマンス向上のためのスポーツ科学研究も進めている。これまでの研究成果はTheJournal of Physiology やMedicine & Science in Sports & Exercise といった運動生理学・スポーツ科学分野の一流雑誌を含め、国際誌に180報以上掲載されている。アメリカとカナダでの海外留学の経験を活かし、複数の国の研究者と共同研究を精力的に進め、国際的な賞も複数受賞している。著書に『ランナーのカラダのなか』(小学館)がある。
X:@naotofuj

https://exerphysiol.taiiku.tsukuba.ac.jp/
 

 
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『猛暑対策BOOK: 日本のヤバい夏を最新科学の力で乗り切る!』
著者:藤井直人 小学館 1430円(税込)

体温調節の専門家が、猛暑によって引き起こされるカラダのさまざまな変化や危ない事例を取り上げ、夏をできるだけラクに、快適に、安全に過ごすための科学的ノウハウを公開します。目からウロコの言説やノウハウを、イラストを使ってわかりやすく解説。来年の夏に向けて備えておきたい一冊です。


イラスト/前田はんきち
構成/さくま健太
 
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