誰かの「軽いノリ」で、誰かの人生が狂わされる

ネットの誹謗中傷、「軽い気持ち」でも被害者の傷は軽くならない。ドラマ『しょせん他人事ですから』が伝える真理_img0
 

優希は弁護士に、そんなに酷いことはしていないと言っていましたが、実態は違いました。優希はあじぇるの配信中に、コメントで「パンツ売って」「ここで脱げや」など卑猥な言葉を大量に書き込み、ブロックされても新たなアカウントで書き込んだだけでなく、掲示板に書かれていたあじぇるの住所を晒し、DMであじぇるの自宅の前の画像を送りつけていたのです。

あじぇるは身の危険を感じ、パニック発作を起こしていました。

優希は再び安田の元を訪れ、父親の西村和徳(勝村政信)と、あじぇるに直接謝罪に行くことになりました。優希はあじぇるの前で謝罪文を読み上げますが、当たり障りのない文章で、それを聞いたあじぇるは激昂します。

「何が悪いか本当にわかってる?」「名誉棄損ってどういう意味か言ってみなよ」とあじぇるは問いかけますが、優希は「あじぇるさんを嫌な気持ちにさせたこと」としか答えられません。あじぇるは「気持ちの問題なの?」「なんで誹謗中傷してきたの。理由を言って」と問い詰めますが、優希は「えっと、ノリっていうか。面白いと思って」と力なく答えます。

 


「殺されるかもしれない」という恐怖

ネットの誹謗中傷、「軽い気持ち」でも被害者の傷は軽くならない。ドラマ『しょせん他人事ですから』が伝える真理_img1
 

優希はあじぇるに家の写真を送りつけられてどう感じたと思うか? と問われても、
「嫌だと思う」としか答えられません。
あじぇるは、自宅の写真が送りつけられたときのことを振り返り、こう語ります。

「あんなの送られたらこっちはストーカーなのかな、家の前に来たのかなって思うだろ。ひょっとしたら殺害予告みたいな意味なのかなって思う」
「自分が人を傷つけたってこと何もわかってない」

あじぇるは写真が送りつけられたことで身の危険を感じ、殺されるかもしれない、というほどの恐怖を感じていたのです。また、配信はあじぇるにとって居場所で、そこが優希の荒らしによって、奪われてしまったのでした。

軽い気持ちであじぇるの配信に荒らしをした優希。一方、命の危険まで感じ、追い詰められていったあじぇる。匿名で書き込めるからこそ、相手を直接傷つけている実感がなく、自分の行動によって被害者がどんな状況に追い詰められるのか全く想像できない加害者と、生活そのものが脅かされ、全てが一変してしまう被害者との非対称性は、社会問題となっている誹謗中傷問題に共通している構図なのかもしれません。