父の“ポンコツ”ぶりは昔からブレない


——お父さまにキレたにしおかさんが、「お金なくてもママとお姉ちゃんがいればそれで良かった! ママとお姉ちゃんと米と味噌があったらそれでいいんだよぉぉ」と泣くシーンが、もう……。

にしおか:うちの父はサラリーマンだったんですが、すごくお酒が好きで、給料も飲み代に使っちゃうんです。母が看護師として働きながら、私たち姉妹を愛情深く育ててくれました。私が父に抱くイメージはずっと酔っ払いです。常に戦力外です。ブレないですね(笑)。

——家のローンもにしおかさんが支払っていたんですよね。「SM代で払ったんだ!」っていう言葉は、にしおかさんからしか出ない言葉ですね……。

にしおか:たくさんの方のおかげで運よく一発屋として世に出られたわけですが、あのときのお金がなかったら、今私たちの家はなかったかもしれないです。ギリギリの綱渡りでした。それに、母と姉は最後まで家で一緒にいたい人たちなんです。他に贅沢な望みもなく、唯一の願いです。叶えてあげたいなあという気持ちもあります。

 

「一番家にいたい人たち」を家にいさせてあげたい

「認知症の症状ばかり見て、母自身を見ていなかったことに反省した」。認知症の母、ダウン症の姉、酔っ払いの父と暮らす、にしおかすみこさんの“2年目”_img0
 

——要介護認定を受けることも、少し考え始めていらっしゃるんですよね。

にしおか:実家に戻ったばかりの頃、友人に「早めにとっておいたほうがいいよ」とアドバイスをもらって、地域包括支援センターに電話で相談したり、そうしたら職員さんがウチに様子を見にきてくださったりはしています。ただ事あるごとに母が荒れて「頭カチ割って死んでやる」となるので、私が疲れてしまいました。そこからダラダラと4年経っています。

現在、母の認知症の症状が進む中、やはり何かあった時、必要な時にすぐ使えるよう認定は受けておいたほうがいい気がします。ただ例えば母をデイサービスにお願いするとして、その間、姉がひとりになります。私は母の代わりは出来ません。じゃあ姉も別の施設にお願いするとしたら、ふたりで一緒にいたいという、たったひとつの願いも叶わずバラバラに過ごすことになります。で、家にいてもいなくてもどっちでもいいと思っている私が残る。いったい誰の幸せのために要介護認定を取るのだろうと。

じゃあ例えば、お風呂介助のサービスはどうだろう。これも母自身の言葉を借りるなら、「ママはお風呂に入れない人じゃない。入りたくないんだ!」となります。差し迫って必要なサービスがない気がします。認定を受けるには調査員の方がウチに来て、母にたくさんの質問をすると聞きます。今の母はきっと答えられないことが多く、そんな自分に落ち込み傷つきます。傷つけてまで、先を見越して動く? 動いたほうがいいよねえ。だって私、日々疲れているもんと思ったりしながら、中々腰が上がらず、明日、更にまた明日と先延ばしにしています。