日常にこそきらめきを見出す。俳優・坂口涼太郎さんが、日々のあれこれを綴るエッセイ連載です。今回のエッセイは「なんだかんだ、てんやわんや、来世紀へ〈前編〉」です。私淑するあの方と共演がなんと叶ってしまったお涼さん、視聴者も気になったその背景について語ります。

「やれること全部を集約して挑まなあかん日」テレビっ子の私がついに憧れの方と同じ画面に映ることになった日のこと【坂口涼太郎エッセイ】_img0
 

NHK「あさイチ」に初めて出演したのは朝ドラ「らんまん」に参加していたとき。
ちょうど私の驚いた顔で終わる放送回があり、その流れで私がまったく同じ顔で朝ドラ受けをしてみたのがはじまりだった。同じ顔とはいえ、もう長年私をテレビ仕様に改造してくださる信頼と実績と愛情が三位一体となったスーパースタイリスト東正晃お兄さんが用意してくれたお花をイメージしたエリマキトカゲのようなケープと、夜なべして爪楊枝でちまちまとドットを施したネイルをしている坂口涼太郎TVショーモデルの風貌は朝ドラ視聴者の皆様の予想を大きく裏切り、エナジードリンクばりの目を覚ます効果があったのか、そのショック効果に対する効能を報告するつぶやきのおかげで、その後もコンスタントに番組に参加させていただけるようになった。

 

TVショーモデルの私のロールモデルはやっぱり藤井隆さんであり、幼い頃から藤井さんが血肉となりダウンロードされているので、隠しきれないイズムが滲み出てしまう。それをいち早くお見抜きになられたのは博多華丸・大吉の大吉さんで、私がエンディングで踊りはじめたときに大吉さんが「藤井くんライバルが来たよー。待ってるよー」とおっしゃられ、番組は終わったのであった。

私は嬉しさとおこがましさとバレてる! という三つ巴のカンジョウを抱きながら生放送を終えて、帰路についた。

そうして、もはや毎回大喜利のような塩梅で見たこともないような服を持ってきてくれる正晃お兄やんが用意してくれた両腕を広げると鳥が羽ばたく写真が現れるトップスを着て、のっけから「おはようございます。デヴィッド・ボウイです」と大嘘をついた二度目の出演のとき。途中にニュースが入る休憩時間で、大吉さんがふと私に「坂口くんは藤井隆くんのことが好きなの?」と聞いてくださり、私はあこがれであり指針にしていること、藤井さんにテレビの中からどれだけ励まされたかということ、団地の入り口で友達とたむろして藤井隆さんのすごさを熱弁していたら気がつけば友達の顔が見えなくなるほど真っ暗になっていて、家に帰れば「あんたこんな時間までなにしてたん?」と言われるほどお熱だった少年Aとは私のことです。というようなご報告を、ニュースが終わり、番組が再開するぎりぎりまでしてしまい、大吉さんは「いつか会えたらいいね」と静かな微笑みを浮かべられたのだった。

そして、その日は突然やってきた。
私が急遽演劇をやることになり、はあはあ言いながら稽古をしていた8月吉日。「あさイチ☆ゴールデン」という特番の生放送で、私は自宅でできるおいしいスイーツを紹介するコーナーを担当することになり、なんとその日のゲストが藤井隆さんなのであった。

一世一代とはこのことで、私はやれること全部を集約して挑まなあかん日になり、お衣装はもちろんお正お兄やんに、メイクはダンススクールが一緒だった幼馴染のヘアメイク八木香保里a.k.a.おカーリーにお願いして、私は藤井さんのネタをいかにまるパクリせずにリスペクトを込めて発表するかを熟考した。

 
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