日常にこそきらめきを見出す。俳優・坂口涼太郎さんが、日々のあれこれを綴るエッセイ連載です。今回のエッセイは「なんだかんだ、てんやわんや、来世紀へ〈後編〉」です。憧れの藤井隆さんについに会えたお涼さん、SNSがざわついたあの日には続きがありました。

「なんてすてきなんやろう。まだまだおれはいかなあかんな」もっともっとテレビの世界が好きになった夢のような夜のこと【坂口涼太郎エッセイ】_img0
 

あこがれの藤井隆さんとご一緒することになった「あさイチ☆ゴールデン」の生放送が終わり、「博多華丸・大吉」の大吉さんがごはんに誘ってくれた。

目の前には藤井さんがいらっしゃり、隣には大吉さんがいらっしゃり、奥のテーブルには華丸さんとマネージャーさんがいらっしゃり、私はあこがれであり、大好きで尊敬する先輩方と乾杯させていただき、そして、いろんなお話をした。

 

生放送中に藤井さんはゆうちゃみさんの落ちた髪飾りを素早く付け直してあげたり、シットキングスさんが踊っている場所のぎりぎりのところにあるケーブルをカメラに映らないところでさっとさばいたり、生放送中に起きたイレギュラーなことを笑いに変えたり、ほんとうに、心から、想像の一千倍、すばらしかった。

全てにおいて行き届いていて、軽やかで、自然で、私の担当するコーナーではあらゆるところを拾ってくださり、空回りしそうな私をアシストしてくださり、なんとかしようと手を差し伸べてくださり、大吉さんと華丸さんはその時間を私と藤井さんのやりとりに託してくださり、見守り、導いてくださった。

いま目の前にいる、かつて私がテレビで見ていた先輩たちはテレビに映っているところも、映っていないところもかっこよかった。

若造の私が萎縮しないように、恥をかかないように、テレビの中でもテレビの外でもやさしく声をかけて、労ってくださった。

「なんてすてきなんやろう。まだまだおれはいかなあかんな」もっともっとテレビの世界が好きになった夢のような夜のこと【坂口涼太郎エッセイ】_img1
写真:お涼さん提供

今回の藤井さんとの共演も大吉さんが以前から番組にかけ合ってくださり、藤井さんへも「坂口くんという子がいてね」とお伝えしてくださり、特番の前日には「明日は坂口くんがいるからよろしくね」と藤井さんに連絡してくださっていたらしい。

私は心の底からの感謝と尊敬とその驚くほどの愛情深さ、優しさがどれだけ稀有なものなのか、もしかして菩薩様なのですか? すごすぎます、というようなことをお伝えしたら、大吉さんは「僕はあこがれの人に会えるまで20年かかった。だから、坂口くんのような若い人たちにはすぐに会ってほしいし、僕がその機会をつくれるならつくりたいんだよ」と静謐で穏やかな目をしながらグラスを傾けられた。

同じ笑いの世界で芸人として生きているわけではない私にあこがれの人との架け橋をつくってくださった大吉さんの、そして、私を真正面で迎えてくださる藤井さんの、さらに、そこにお付き合いしてくださり、同じ空間で目をとろんとさせてお酒を嗜む華丸さんのすてきさに私は胸がいっぱいで、もっともっとテレビの世界が、テレビが好きになった。テレビの中で闘い、生き様を懸けて、ご自分のセンスを磨きに磨き上げて人を楽しませる技と心意気を持っている先輩たちを心の底からかっこよくて尊いと思った。

そして、テレビの中で最高にかっこよくて発光している人はテレビの外でもすばらしいのだということを知れた。

どれだけ技があったって、すごいことができたって、最後は人柄だって、この世界にいるとよく聞くフレーズだったけれど、それが真理なのだと思った。そして、そういう人は必ずパフォーマンスだって魅力的ですてきなのだということを私はここにいる先輩方を見つめながらその通りだと信じることができた夜だった。

 
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