プロレスにすべてを懸けてきた「光」と「闇」


リング上では最大の敵として憎み合ったダンプ松本と長与千種。でもふたりは心の奥底では通じ合っていて、ともにスターになる日を夢見て支え合った時間や記憶は消えておらず、形は違えど互いにプライドを持ってプロレスにすべてを懸けてきた事実は、ふたりの絆をゆるぎないものにしていたのでした。

ヒールがいるから主役が輝くし、主役がいるからヒールが輝く。表と裏、光と闇のようなふたりは互いになくてはならない存在だったのかもしれません。

「世の中の罵詈雑言を食って生きていく」恵まれない少女が伝説の極悪ヒールに。『極悪女王』が描くダンプ松本の生き様_img0
光側のクラッシュギャルズ。(写真:Netflix)
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闇側のダンプ松本。(写真:Netflix)

5話まで見終えて、分からなかったことがありました。ダンプ松本がなぜそこまでして全国民から嫌われる極悪非道のヒールであり続けたのかということです。ある程度売れてお金が入っても、おんぼろの新人寮から出て行かなかったところをみると、お金に執着もなさそうだし、ヒールをやればやるほどむしろ人気は下がり、敵意を向けられるようになっていく。日々死ねなんて言葉を日本中からかけられるなんて、普通にメンタルをやられそうです。「ただ強くなりたかっただけだよ」というセリフは出てきますが、有名になりたかったのか、ヒールをやること自体に快感を感じていたのか。そこはよくわかりませんでした。

 

本物の「スター」を痛感したからこそ…


ダンプ松本は、天性のスター性を持ったジャッキー佐藤に憧れて、プロレスの世界に足を踏み入れました。

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鴨志田媛夢さん演じるジャッキー佐藤(左)と、水野絵梨奈さん演じるジャガー横田(右)。(写真:Netflix)

ドラマ中のセリフでこんなものがあります。

「スターになる人は勝手に光り出す」
「プロレスってのは残酷なもんでさあ、いくら実力があったところでスター性のあるやつが全部もってっちまう」
「残酷だからおもしれえんだろう」
「実力以上の人気がないとプロのトップは務まらない」

ジャッキー佐藤の後に現れ絶大な人気を誇った長与千種もまた、天性のスター性を持った人でした。ダンプ松本はそんな存在に焦がれ、強く憧れていたのだと思います。目の前で長与の試合を観たダンプ松本は、長与のスター性をハッキリと認識します。なかなか芽が出ない自分には、ジャッキー佐藤や長与が持っているものがないということを、嫌というほどわかっていたのでしょう。