香りに支配されるのではなく支配するのが50代
――そういった変化にともなって、追加された香り、あるいは香りの使い方ってありますでしょうか?
美香 “追いフレグランス”ですね。私は外出するとき必ず携帯用のフレグランスを持って出るんですけど、以前は朝つけたのと同じものを携帯用の小瓶に移して持ち歩いていたんです。でも50歳を過ぎた頃から、違うものを携帯するようになりました。そうすると、香りが変わって気分がリセットされるんですよ。主張の強いフレグランスを着けなくなったから、違う香りをかぶせても濁らなくなったのかも。
松本 好きな香りだけ選ぶようになったから、香りに一貫性が生まれて濁らなくなった、といのもあるんでしょうね。
美香 たしかに若い頃は、「これを着けたら愛されるかも」とかいろんな理由で選んでいたから、一貫性はなかったかも。今は「季節を感じられる」とか「心が落ち着く」とか、もはや精神論で選んでいるから(笑)。
松本 これまでたくさんのフレグランス企画を手がけてきましたけど、どこかで「好感度フレグランス」という言葉を意識していたところがあったんですね。でも今は、どんなふうに着けるかとか、TPOに合わせた着け方とか、ファッションや気持ちとの相性とか、ちょっと戦略的というか知的に考えるようになりました。香りに支配されるんじゃなく支配する、というふうに変わってきたんだと思います。
美香 分かる! 突き詰めると香りを楽しむのって、知的な自己満足ですもんね(笑)。
若いときから変わらず本能的にすごく好きな香りとは
――お話を聞いていて、お二人は香りの何たるかを知り尽くしている、という印象を受けました。そんなお二人が、何歳になっても変わらず愛用しているという香りがあったらすごく気になるのですが、いかがでしょうか?
松本 シャネルのクリスタル オードゥ パルファムは、20代半ばで出会って、今も着け続けている香りですね。最近はウッド系の香りを好むようになったので、スタメンではなくなりましたけど、本能的にすごく好きな香りです。
美香 私もこれはずっとスタメン。香りの好みが違う私と千登世さんだけど、このシャネルのクリスタルだけはかぶりましたよね。
松本 私は20代の前半はCAとして働いていて。当時、CA界隈では、その名前に「毒」って付いているくらいアピール力の強いディオールのプワゾンが人気だったんです。だから私も、「これを着けたら色気が出るかしら」なんて着けていたんですけど、そんなときに出会ったのがシャネルのクリスタルで。「まわりが着けている」とか「愛される」とか全部無視して、本能的に好き!と魅了されて。以来、変わらず愛用し続けています。
美香 昔はそんなふうに、皆が着けている、という香りが人気でしたよね。今は逆に、どこの香りか分からないものを探す人が増えているらしく、「ニッチなものがウケている」と香り業界の方から聞きました。実際私も、あらゆる香りを着けてみて、その効果を比べて「これ!」というモノを追求しています。もともとそういうタイプではあったんですけど、年齢を重ねてお値段が高いものでも頑張れるようになったので、より追求具合が増している感じですね。
松本 オンリーワン嗜好の時代だけに、男性も、どういう香りをまとっているかでけっこう見る目が変わっちゃいますよね(笑)。
美香 分かる! 香りって、その人が積み重ねてきたものが出ていますからね。だから個人的にクリード アバントゥスの男性用フレグランスが、色っぽくて大好きで。いい香り過ぎて、着けている男性はみんな素敵に見えちゃいます(笑)。
撮影/嶋田礼奈(人物)、美香(静物)
取材・文/山本奈緒子
構成/藤本容子
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