夫の手綱を、妻が握らなくたっていい

“夫の手綱”を妻が握らなくたっていい。発達障害のパートナーとの関係に疲れたときの「自分の守り方」【野波ツナさん】_img2
(イラスト:『発達障害・グレーゾーンの あの人の行動が変わる言い方・接し方事典』より)

——最終章の「がんばっている“あなたへのヒント”」では、「あの人ファースト」じゃなく「自分ファースト」も大事だよ、と教えてくださっています。

野波:私もかつて、「自分が至らないせいでこうなってしまった」と無力感を感じていたことがあったんです。アキラさんのお母さんにも、「夫の手綱をしっかり握りなさい」「手の平の上で転がしなさい」と言われたことがありました。でも、「手綱」や「手の平で転がす」なんて言われても、あまりに抽象的すぎてどうしたらいいのか全然わからなかったんです。今思うと、あの人には手綱なんてついてないし! 手の平に乗せようとしても勝手にどっか行っちゃうし! と思えるんですけどね。若い頃は「頑張ろう、頑張ろう」と思い続けてしまって、ちょっと潰れてしまった時期があったんです。

——「妻が手綱を握る」という言葉は、プレッシャーでもありますよね……。
 

 


野波:家族とか夫婦って、それぞれのユニットだと思うんです。たまたまうまくいっているユニットもあれば、そうでないところもある。うまくいっているユニットを参考にはしても、目標にまでは据えなくていいんじゃないかなって。どんな家庭がいいかなんて人それぞれなので、「お母さんみたいに」とか、「お姑さんみたいに」とか、そういった見本を作らない方がいい。

アキラさんも、行動がうまくいっていないことが多々あったけれど、人間性そのものはいい人だから一緒にいた、というのが大きいです。人柄はいいけど、アキラさんは結婚に向いていなかったんですよね。彼なりに無理して頑張っていたんだと思うんです。人とユニットを組むこと自体に向いていなかったのに、そこに引き入れてしまったのは、私自身でもあるなと思う部分もあります。