10月4日に日本公開され、わずか3日間でその週の観客動員数1位になった『シビル・ウォー アメリカ最後の日』が、Xでトレンドになるほど話題を呼んでいます。
Netflix映画『ドント・ルック・アップ』や『終わらない週末』に続く、かなりリアルなディストピア映画。『エブリシング・アンド・エブリウェア・オール・アット・ワンス』、『関心領域』を世に送り出したスタジオ「A24」が、史上最高額をかけて制作した今作は、それらと同じく、賛否がかなり分かれそうな作品です。登場人物の心理はほとんど描写されず、善悪の判断も観る者の想像力に委ねられます。それが鑑賞後の余韻を生み、誰かと感想を語り合いたくなるというのも、ここまで話題になっている理由のひとつ。
しかしこれは戦争映画というより、ダークなロードムービーという方がしっくり来る作品。舞台は19の州が離脱し、FBIは解体されドルは価値を失った、内戦状態の近未来のアメリカ合衆国。キルスティン・ダンスト演じる中年の戦場カメラマンのリーが、3人のジャーナリスト仲間たちと、大統領が襲撃される前に最後のインタビューを撮ろうとワシントンD.C.を目指します。
なぜ内戦が起きたのか、何のために殺し合うのか説明は一切ないまま、NYの市街地が爆撃され、大勢の市民が殺されていきます。政府軍の本拠地であるホワイトハウスに近づくほど、それは死に近づくことを意味し、バッドエンドの予感しかしない、悪夢のRPGを観ているよう。
荒廃したガソリンスタンドや、一見牧歌的で平和な街。それらに立ち寄るたびに、アメリカの崩壊ぶりが映し出され、誰かが殺されていく。観ていて「あ〜、そこは寄らないで〜! 嫌な予感しかしないから!!」とハラハラ、止めたくなる私。そして『関心領域』では“音”が恐怖を生み出しましたが、この映画でも“銃声”が心臓に悪い(涙)! IMaxシアターで観たら、もっとすごそう。
イギリス人のアレックス・ガーランド監督が撮る映像は美しく、死体の山や火の粉さえも、ある種芸術的でスタイリッシュに見えてしまう。この辺りがA24らしいなと思いました。そしてそんな「無駄に」美しい風景の、どこに狂気が潜んでいるのかわからないところが、RPGっぽくて怖いのです。どこか一つ誤れば、敵と見做されて殺されてしまうエンディングが待っているのだから。
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