「住吉さんが素朴にポロロンとひと差し指で弾くウクレレの音は、僕には絶対に出せない音なんですよ。僕はその音が好き。住吉さんが初々しい音で弾いてくれることで、お客さんにウクレレに親近感を持ってもらいたい。それは僕にはできないことなんです。もし間違えても僕がバックアップしますから、大船に乗ったつもりでとにかく本番を楽しんでください」
私は本当素晴らしい師匠に巡り会えた。目頭も心も、熱くなった。
そして迎えた本番。舞台袖で、心臓が口から飛び出るかと思うほど緊張した。1曲目は、後で師匠から「本番が一番出来が良かった!」と褒められるほど上手くいった。2曲目は、指が迷子になった部分もあり、あんなに練習したのに、と自分には悔しさも残る出来。でも、音楽って温かい、合奏って楽しいと、ちゃんと思えた。
最後はツアーTシャツになり全員ステージに出ていく、憧れのアンコールも体験。プロのバンド演奏の中にぷかぷかと浮かぶ気持ちで、肩の力を抜いてコードを追いかけ、心から楽しく弾けた。名残惜しく、再びステージに立ちたいという気持ちすら残った一夜だった。
観にきてくれた長年の友人、50代女子から、翌日メールが来た。
「一生懸命に演奏している姿、柔らかな音色や弾き語りにジーンとしたよ。貴方のチャレンジする姿に背中を押され、私も重い腰を上げて、ずっと憧れ続けていたハープの一日体験教室に、本日申し込みました」
涙が出そうなくらい、うれしい言葉だった。決して完璧ではなくても、情熱を持って行動したことが伝染し、人の行動を変えたのだ。難しいと諦めず、ライブに挑戦して本当に良かった、と思った。
演奏は、聴くだけよりも、音楽の波動と一体になれる癒しがある。合奏することで、人と繋がれる喜びがある。観ている人とも「生きているって楽しいね」という気持ちを分かち合える感動がある。始めて一年半、ウクレレをどんどん好きになっている自分がいる。楽器ダメ人間の私に、相棒ができたようだ。
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