「おいしい情報ならこの人」という信頼厚い人気料理家arikoさんがおいしい旅話を伝えてくれるエッセイ本『添乗員ariko まだまだおいしい日本の旅』が刊行されます。おいしいもの目当てで旅先を決めることも多いというarikoさんに出版を記念しておいしい旅話をおすそ分けしていただきます。今回は香川からうどんのお話です!
さぬきうどんの「本当のところ」
香川県民はうどんをよく食べると聞くけれど……「毎日どころか、朝に、昼に、おやつに、晩にと日に何度か食べることも珍しくない」とは、彼の地で100年続くお茶問屋を営む友人から聞いた話。そういう私も麺好き、うどん好きなので、香川を訪れた時にはあの店、この店と食べ歩くのを楽しみにしています。
四国・香川県の名産としてもはや誰もが知っているさぬきうどんは、いりこのあっさりとしただしとコシのある麺が特徴です。県内の至る所にうどん店があり、ゴリゴリに波打つようなしっかり角の立った硬めのものから、つるりと滑らかで喉越しのいい柔らかめのものまで、本当にその種類はいろいろ。なんとなく「さぬきうどんと言えば、アルデンテ的にコシがしっかりした太い麺のもの」と思い込んでいませんか? けれど、実はそういうタイプばかりではないというのが意外な事実。こういうことって、実際に訪れてみないとわかりませんね。ちなみに、香川県民は好みに合わせてお気に入りのお店がいくつかあり、体調や気分に合わせて通い分けているのだそう(うらやましい話です)。
私が香川を初めて訪れたのは今から7年ほど前だったでしょうか。地元に住む友人に「おいしいうどんと言えばまずここ」といって連れて行ってもらったのが、高松駅からもほど近い場所にある【うどんバカ一代】でした。朝から行列必至とのことなので、開店時間すぐを狙って朝早くから訪れたのですが、もうすでにどんどんお客さんが詰めかけていました。初めていただいたさぬきうどんは、冷たいいりこだしに浸かった麺の流れも美しい冷やかけうどん。まさにつるつるシコシコで小麦の香りが鼻の奥にぬけ、つゆもすっきりしていながらコクもあるという理想の一品。
「なんておいしいの!」と調子にのって、ちくわや半熟卵の天ぷら、お稲荷さんに加えて、名物の釜玉バターうどんまで追加。おみやげの生うどんまで手に入れて、大満足でお店を後にしました。ちなみに、こちらの釜玉バターうどんは茹で上げた熱々のうどんに生卵を落とし、バターをトッピングしたもの。だし醤油をかけてズズッとかき込めば、思わず鼻の穴も広がってしまうほどのおいしさ。さらに、ここに明太子を加えれば一層幸福感が増す! …という罪なもの。この食べ方が気に入ってしまい、東京でもこのうどんを味わいたいと時々お取り寄せしています。今ではすっかりわが家の定番の一品になりました。
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