老齢のマウスを若返らせた物質とは?
一定年齢以上の人々にとっては、「できることなら若返りたい」という欲求も、切実なものになっているはずです。もしも、老化に抗い、若返りを促すような物質があるとしたらどうでしょうか。しかもそれが、ある野菜に豊富に含まれているとしたら?
ことの発端は、二匹のマウスを使ったある実験でした。一方は老齢の、肥満していて動きも鈍い個体、そしてもう一方は、若くほっそりとしていて活動的な個体です。この二匹のマウスの体側の皮膚を剝ぎ取り、傷口同士をつなげた状態で癒合させると、やがてそれぞれの体が相手の体から血液を吸い出し、自分の体の中を巡らせるようになります。
すると、驚くべきことが起こりました。みるみるうちに老齢のマウスが若返り、逆に若いマウスが年老いていったのです。年老いたマウスが若返ったのは、若いマウスから吸い出した血液を経由して、「若返り物質」とでも呼ぶべきなにかを体内に取り込んだからだと考えられました。
その正体を探って世界中の研究者たちが探究を進める中、あるチームがついに問題の物質、NMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)にたどり着きました。その研究を手がけたのは、米ワシントン大学医学部の研究チームですが、うち一人は日本人である今井眞一郎教授です(同大学医学部部門・人間栄養センター長のサミュエル・クライン教授との共同研究)。この方は、ノーベル賞を獲るかもしれないと私は踏んでいます。それほどまでに、NMNの作用に関する発見はインパクトの強いものだったのです。
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