俊敏な身のこなしが回復。若返り物質はヒトにも有効
動物でもヒトでも、NMNを摂取することで、あきらかな若返りの兆候を示すことが続々と判明していきました。
マウスを使った実験では、老化に伴う体重増加の減少、エネルギー代謝の改善、網膜の視細胞の機能向上、骨密度の増加といった結果が得られ、ヒトを対象とした臨床試験でも、インスリン感受性の大幅な改善──それは、糖尿病の予防や改善につながります──や、筋肉の再構築を促す遺伝子の働きの向上などが見られました。
高齢の人がNMNを服用すると、俊敏な身のこなしが回復するといった結果も報告されています。アルツハイマー型認知症や心不全などの疾患にも効果があるとされています。まさに若返りです。
私が医学部の授業で習ったのは、「体のエネルギー代謝にとって必須の物質はNAD(ニコチンアミド・アデニンジヌクレオチド)である」ということでした。しかし、NADを直接摂取しても、腸で分解されてしまい、有効成分として体に届くことはありません。
一方、NMNは、NADの合成中間体、すなわちひとつ手前の段階で現れる化合物ですが、これを摂取すれば、腸内で酵素が働いて代謝がうまく作用し、NADとして体内に取り込むことができるというわけです。
教科書で習った「NADが大事」という点に間違いはないのですが、それを外から補給しようとする場合は、NADではなく、NMNの形で摂取しなければ、体内で有効に機能させることができないという点を発見したのが、この研究の最大の眼目です。
Comment