女性にとって子宮は大切な臓器。「子宮内膜症」ではどんな治療が行われるのか、そしてどのくらいの期間を治療に要するのか、心配は尽きないですよね。2021年に自身のSNSで子宮内膜症であることを公表したフリーアナウンサーの宮島咲良さん。その手術を担当したのは、東京国際大堀病院・産婦人科医の柳田聡先生。今回は宮島さんのケースも交えながら「子宮内膜症の治療」について教えていただきます。

 


どんな治療を行うのですか?
→まずは薬による治療で様子を見ます。改善が見られない場合は手術を行います。


柳田 聡先生(以下、柳田):子宮内膜症の治療は、大きく分けると薬による治療と手術があります。通常は体に負担の少ない、薬による治療から始めることが多いですね。主に女性ホルモンの分泌を抑える薬を使用しますが、メジャーなものとしては2つあります。ひとつめは「低用量ピル」、もうひとつは黄体ホルモン薬の「ジエノゲスト」という薬です。今はこのどちらかを使うことが推奨されています。

ジエノゲストは子宮内膜症そのものを治療する作用があり、軽度の内膜症であればなくなることもあります。月経痛や過多月経の症状も和らげますが、不正出血の副作用がある場合があります。低容量ピルは、生理痛や過多月経の症状のほかにPMSにも効果がありますが、子宮内膜症が完全になくなることはありません。薬によって一長一短、メリットとデメリットがあるので、患者さんの状態を見て使い分ける形になりますね。

宮島咲良さん(以下、宮島):私の場合はジエノゲストで投薬治療をしていただいてから、手術という流れになりました。お薬の治療は半年ぐらい続きましたね。

柳田:宮島さんの場合、ジエノゲストの効果でチョコレート嚢胞が小さくなってくれることを期待していたのですが、残念ながら小さくなりませんでした。なので、最終的には手術することにしました。

宮島:子宮内膜症の手術にもいくつか方法があったりするのでしょうか?

柳田:そうですね。主にチョコレート嚢胞の場合ですが、手術の方法を決める要素は何かというと、卵巣であれば片側なのか、両側なのか。あとは年齢と今後妊娠したいかどうか。そして悪性の可能性、つまり卵巣がんの可能性が高いかどうかですね。そうしたいくつかの要素を考慮して手術の方法を決めます。

実際にやることとしては、卵巣の中の子宮内膜症の部分だけを削り取るか、卵巣そのものを摘出する手術があります。宮島さんの場合は、両方の卵巣の子宮内膜症の部分だけを削り取るという術式をとらせていただきました。結果、両側の卵巣を正常な状態で残すことができました。

宮島:無事に卵巣の子宮内膜症を取り除いていただいて、思わずほっとしました。あと、私がありがたかったのは「腹腔鏡手術」をしていただいたことですね。想像していたよりも体への負担がずっと少なくて、その後の回復も早く助かりました。

柳田:宮島さんのように、手術前の検査で悪性の可能性がない方については、今は腹腔鏡手術の割合がすごく増えてきています。以前と比べれば、患者さんの術後の身体的な負担もだいぶ軽減されていると思います。とはいえ、やはりそこもケースバイケースで、卵巣の中にしこりが見つかったり、急速に大きくなっていたりと、悪性の可能性が高いと推測される場合は「開腹手術」を行うこともあります。

 
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