光野桃「美の眼、日々の眼」

2017.4.25

光の編み物~CIANSUMIの美の世界

造花やコサージュの芯に使われるペップという堅い素材を編んで作られたピン。服だけでなく、小物や壁、カーテンなど、好きなところにつけることができます。あえて白いものにつけても素敵。

わたしが今、とても惹かれている手編みのバッグとアクセサリーのプライベートレーベル「CIANSUMI」をご紹介します。

初めて「チャンスミ」を知ったのは、1昨年の秋。木のオブジェと組み合わせられたニットの小さなポシェットの写真を見て、心惹かれたのです。

そして、今春の展示会へ。渋谷のギャラリーを訪ねると、コンクリート打ち放しの白い光の中に、あるものはポツリと、あるものはフワリと、またあるものは半分消えかかったかのように、作品たちが存在していました。

軽やかで、光を感じ、でもそれだけではありません。これまでわたしが素敵だと思ってきたものの価値観を覆す、一歩先へ行くデザイン、という気がしたのです。

でも、その理由をすぐには言葉にすることができませんでした。ある意味、衝撃を受け、少したじろいでもいたのです。

蛍光灯の白い光を美しい、格好いい、と感じたのも生まれて初めてのこと。

こんなに新しく、可愛く、心地よく、なのに、春の夜の嵐に心の奥を揺さぶられるような、胸をかき乱されるような気持ちになるのはなぜなのだろう。

光の中に溶けていきそうなチャーミングな作品群でありながら、一本筋の通った気骨が、どの作品にも潜んでいるような気がしました。

水色のはネックレスというより、胸の位置にボリュームたっぷりのフリンジが下がるデザインなので「チェストドレス」と名付けたそう。わずかにグレーがかった水色はニュアンスがあり、大人っぽい。Tシャツに薄手のローブを羽織った時などにつけたくて、わたしも購入しました。定番のバングルはシーズンごとにいろいろな色で編まれる人気のデザイン。

美術大学のテキスタイル科で学んだというつくり手、中村須彌子さんが、編むという手法に魅せられたのは、大学時代に友人からニット帽を作ってほしい、と頼まれたことが最初でした。

卒業制作では、いろいろなメーカーのセロハンテープなどを繋げて糸代わりにして帽子を編み、バッグやアクセサリーもつくりはじめ、糸状のものであればどんな素材でも、かぎ針一本で形になる、その自由さに魅せられて、在学中にレーベルを立ち上げました。

そのレーベルの由来も、自分の呼び名を逆さ読みしただけという軽やかさ。

美しいと思う、その一瞬を形にしてとどめたい、バッグやアクセサリーとして利便性を追求して完成させるより、糸がかたちづくる「きれいだな」と感じる瞬間を、すみやかに切り取って提供したい――それが中村さんのものづくりの基本的な考え方だと言います。

確かに、CIANSUMIのバッグやアクセサリーを前にして、一瞬、戸惑うこともあります。

スケスケだ! とか長財布が入らない、とか、どうやって持つのだろう、つけるのだろう、と考えさせられるからです。

でも、しばらく見ているうちに、トートバッグにはきれいな布や小さな花束を入れたら可愛いかも、とか、長財布はもう持たなくてもいい、とか、発見とイマジネーションが沸き起こり、楽しくなってくるのです。

CIANSUMIのものづくりは、それを手に取るとき、当たり前だと思っていた価値観がグルリと一回転し、細胞と細胞の間に風が吹き通り、自由な隙間ができる、そんな感覚をもたらしてくれます。

受注会でのオーダー制作による、1点1点手づくりされた作品は、手に入れるまでの道のりも長いけれど、おしゃれの呼吸をゆっくりと、丁寧にしてくれる気がするのです。

ニッティドプラスティックバッグ。このプラスティックの糸は、なかなか思い通りには動いてくれず、フワッとしたりばたついたりするそのラインが綺麗だと感じる、と中村さん。糸の行きたい方向に行かせてみると、それがリズムや泡のような不思議なテクスチャーを生み出すそう。留め具も中袋もないのは、そのほうが美しいと思うから。バッグとしてだけでなく、壁に掛けたりキッチンで野菜を入れたり、自由に使ってみたくなります。
今春の展示会でのみ受注販売したオーガンジーの透けるトートバッグ。肌色と呼びたくなるベージュが美しく妖しく、大きな黒のサクランボがただならぬ感じを醸し出します。
中村須彌子さんの手は古典絵画のように美しく、それがなめらかに動いて糸が編み上がっていく様子はまるで魔法のよう。ニットレーベル「CIANSUMI」の作品は、年に何回かの展示会と、青山の「オカイユ」はじめ全国のセレクトショップ、オンラインショップで販売されています。展示会と販売店舗、ワークショップの情報は随時お知らせが掲載されるインスタグラムツイッターで。 ★4月22日から(26日を除く)28日まで表参道のあお山ヒュッテにて「pinking shop byCIANSUMI」が開催されます。ピンク、白、ベージュの春色アクサセリーやバッグが並びます。