未来の大学入試【前編】で書いたように、最初の二つは「主体性」にあたり、あとの四つは「協働性」を測っている。
これらの指標(毎年、少しずつ変わっている)を四段階評価で採点していく。最後に試験官同士ですりあわせを行い総合的な評価を決める。
午後には面接(四国学院大学では、従来の面接と区別するために「インタビュー」と呼んでいる)を行う。実は、午前中のグループワークよりも、この面接が試験の中心となる。
現状、多くの大学のAO入試や推薦入試は、書類審査と小論文と面接となっている。しかし従来型の面接では、ほとんど受験生の本質は分からない。高校側で、ものすごくしっかりと準備をしてきてしまうからだ。そこに揺さぶりをかけようとして変則的な質問をすると「圧迫面接」といって問題となる。大学側が訴えられたケースも多い。
だが、この四国学院大学の方法ならば、午前中に行ったグループワークについての質問ができるので、準備のできない面接となる。その場で考えて答える類いの質問と、ある程度予想可能な質問を交互に設定すると、準備してきた答えにも若干の変化が出ることも分かってきた。要するに、少しでも、その生徒の「素」が見えてくるのだ。

よく誤解されるのだが、この試験は、コミュニケーション能力の高いとされる生徒だけが得するシステムでもない。
実際、たくさん発言はするが空回りな受験生も多い。リーダーシップを発揮した方がいいだろうと考えて、議論を先導し、しかしその能力がないためにグループ全体が迷走してしまうこともある。
一方で、午前中のグループワークではあまり発言をしなかった静かな生徒が、午後のインタビューで聞いてみると意外としっかり課題について考えていたというケースもある。大事なことは、自分の役割をきちんと担えるという点にある。
この試験結果全体を一人一人のカルテとして記録する。
四国学院大学は少人数教育の大学で、一年次は約20人編成のクラスが構成されている。その担任に、このカルテを渡し一年間の学びの伸びを見る。長所を伸ばし、足りない部分を初年次教育の中で補うようにアドバイスをしていく。
また四国学院大学は全学リベラルアーツのシステムを導入しているので、二年次から専攻が決定する。その際に決まったアカデミック・アドバイザーにカルテは受け継がれ、やがてゼミの先生にまで届けられる。
要するに、4年間の学びの伸びを見る出発点として大学入試を位置づけていこうという考え方だ。もちろん、まだ始まったばかりの制度なので、このすべてがうまくいっているわけではない。試行錯誤の中で、大学が、学生一人一人を見つめる教育を始めようとしている。

当初、この新制度入試の試みは、学内でも、あまりにユニークすぎて受験者が減るのではないかと危惧された。しかしながら、実施以来3年間で受験者数は堅調に推移しており、定員を回復した学科もある。
四国学院大学では、ただ試験制度を変えただけではなく、その制度の意味を説明し、公開講座やワークショップを繰り返し開いて、県内外の高校に理解を求めてきた。文字通り、文科省が目指すところの高大接続による改革を推進してきたのだ。
地方の小さな大学は、人口減少によって、どのような努力をしても、もはや飛躍的に志願者を増やすといったことは不可能になっている。資本力にも限りがあるから、大規模宣伝などもできないし、またその効果も薄い。大学の特色を出しつつ、しかも、それを地道に宣伝していくしか道はないのだ。

最後にもう一つだけ、設問を紹介する。

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以下の題材で、ディスカッションドラマ(討論劇)を創りなさい。

2040年、人口減少、少子化が進み、いよいよ都道府県レベルでの合併を行わなければならなくなりました。
日本で最も小さい香川県は、当然、合併の対象となります。
どの県と合併するか、実現不可能と思われる案も含めて六つないし七つの案を考えてディスカッションドラマを構成してください。

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さぁ、皆さんは、いくつのアイデアを思いついただろうか?
次回は10月23日(火)公開予定です(つづく)