これまで長いことファッションの第一線で活躍してきた風間さんと大草さん。同じ業界に身を置きながらもなぜか接点がなく、面と向かって話をしたことは一度もなかったのだとか。でも、仕事にかける情熱や物事に取り組むひたむきな姿勢から、二人にはきっと相通じるものがあるはずだと常々感じていた編集長・大森。お互いにどこか意識をしている様子もうかがえたことから、それならばいっそ引き合わせてしまおう! ということで、今回ミモレならではの夢の対談企画を実現させることになりました。キャリアや人生、おしゃれの話など、想像以上に盛り上がった二人のトークをお楽しみください。
風間 ゆみえ 1971年生まれ。スタイリスト。多くの女性ファッション誌で活躍し、近年はブランドディレクション、バイイング、商品プロデュースなど、その活動の幅を多方面に広げている。著書に『LIKE A PRETTY WOMAN』、『Lady in Red』など。
大草 直子 1972年生まれ。大学卒業後、婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に入社。雑誌「ヴァンテーヌ」の編集に携わったのち、独立。新聞、カタログを中心にスタイリング、エディトリアルをこなすかたわら、広告のディレクションやトークイベント出演、執筆業にも精力的に取り組む。2015年1月よりWEBマガジン「mi-mollet(ミモレ)」の編集長、2018年7月には、ミモレのコンセプトディレクターに就任。 近著に 『大草直子のSTYLING &IDEA』(講談社)がある。プライベートでは3児の母。
ゆみえさんは
私にとって
“構いたくなる女”
大草(以下、大):私はゆみえさんがメインスタイリストの一人として関わられていた『グラマラス』(2005~2013年)の創刊当初から、ずっとお仕事を拝見していたんですよ。私はそのときちょうど産休中で家にいたんですが、あの自由でインターナショナルな空気感に、「日本にこんな雑誌ができたんだ! ファッションやメディアというものは、私が休んでいる間にもこうやってどんどん前に進んでいくんだな」とショックを受けたことを覚えています。それからというもの、何かとゆみえさんのお仕事ぶりに注目するようになって。今はもうなくなってしまったけれど、『大人ルックス』という、掲載商品をすべて通販で買えるという雑誌でもスタイリングをされていましたよね。
風間(以下、風):はい。その雑誌から2011年に『風間ゆみえスタイルブック』という増刊号も出していただいたんですが、そのときは一冊丸ごと私がスタイリングした服を、自分で着て通販で売るという(笑)。そんなこともありましたね。
大:当時スタイリストでそういうことをやっている人はまだいなかったから、私には衝撃的なことで。あの手法は、いま巷でたくさん出版されているスタイリストやモデルのスタイルブックや、独自のコンテンツを持つ物販サイトの走りだったと思うんですよね。あまりに新鮮だったから、私もよくあの雑誌を見ては買い物をしていましたよ。そういえば、実はゆみえさんのブログをチェックした後に、ゆみえさんが着ていらしたワンピースと同じものを買ったこともあります(笑)。
風:本当に!? 嬉しいです。
大:それくらいに私はゆみえさんのスタイリングが好きなんですよ。なぜかというと、ゆみえさんのスタイリングには常にどこか“湿度”が感じられるから。女性というのは年齢を重ねるにつれて、肌はカサカサになってくるし髪のツヤはなくなるしetc.……、だんだん潤いがなくなっていくでしょう(笑)。でも、ゆみえさんの作る女性像にはそれがある。一人でバーンと自立して生きていく女もいいけれど、私は湿度のある“構いたくなるような女”に憧れるんですよね。
風:“構いたくなる女”っていいですね(笑)。
大:それからグラマラスでのスタイリングにも感じていたように、“インターナショナルな薫り”が漂うところも好き。それは、ハーフのモデルに服を着せているから、というような単純なことではなくて。ゆみえさんが着る人に服を“引き寄せる”ような着せ方をしているからなんじゃないかなと思うんです。というのも、現代の服というのは大量生産されているものだから、買ってきたものをただそのまま着るだけではユニフォームになってしまいますよね。そこに、たとえば肩を抜いたりデコルテを見せたりして、いかにアレンジを加えるか。それこそが服を着こなすということであり、服を引き寄せて自分らしい“スタイル”を作る肝だと思うんですが、洋服を着る歴史の長い西洋では、女性たちがごく自然にそういう着こなしを楽しんでいる。ゆみえさんのスタイリングにも同じようなニュアンスが感じられるんです。
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