パリマダムのグレイヘア論。白髪はOK? NG?
2018年の流行語大賞にノミネートされたこともあり、認知度が一気に高まった「グレイヘア」。「どう染める?」「どう隠す?」から「染めない方法」「白髪を生かしたスタイル」へと移行する女性が増えており、テレビや雑誌でもグレイヘアの特集が数多く組まれるようになりました。
今回はパリと日本を行き来するカメラマンであり、日本でグレイヘアのブームの火付けとなった『Madame Chic Paris Snap ―大人のシックはパリにある』(主婦の友社)の撮影を担当した斎藤順子さんに「年齢を重ねたパリマダムのカッコよさ」「フランス女性のグレイヘア論」についてお話を伺いました。
パリマダムは
自分の「好き」を表現する天才
グレイヘアの仕掛け人・依田邦代さんとは10年くらいの付き合いになります。依田さんが当時、担当していたインテリア雑誌でパリ取材にいらした時にお会いしたのが最初。その後、撮影の仕事を何度かご一緒し、2015年に「グレイヘアのパリマダムを撮影したい」というオファーを受け、撮影を担当することになりました。
確か依田さんからのお題は、「40代〜50代以降の大人の女性たちの生き方やスタイルがわかるような1枚」というような内容でした。日本に比べ、フランスの女性たちは生き方も意見もはっきりしています。そして、年を重ねたパリマダムたちは本当に魅力的。例えば、髪色が白くなったからといって「白髪=おばあちゃん」じゃないんですよね(笑)。ファッションもメイクも年齢を感じさせない魅力が溢れているんです。
この魅力って一体どこから来るのだろう? と考えてみたのですが、「自分らしさ」を貫いている女性に多く見受けられます。洋服に着られることもなく、色も小物も自分に似合っているものを選んでいる。“個性が際立っている”と言ったほうが正しいかもしれません。特に50代以降の女性たちは、「自分の好きなこと」「自分に合ったスタイル」を表現する天才ですね(笑)。10代、20代のパリジェンヌたちも憧れる大人の女性がパリにはたくさんいます。
パリマダムは生涯現役
年を重ねても「女性らしさ」を失わない
日本とフランス女性の違いはいろいろありますが、「年齢を重ねても女性らしさを失わない」ことへの意欲が違うように感じます。肌のハリの低下、お腹の出っ張り、胸が垂れるなど、40歳を過ぎれば代謝の低下、女性ホルモンの減少などで体型の変化は否めません。ですが、パリマダムはこれらの変化もネガティブに捉えず、「それも私」と現状を受け入れている女性が多いですね。
さらに、これらの変化をどのように魅せるか、を考えている女性が多いのも特徴です。例えば、美容特集などで出てくる「アンチエイジング」という言葉。フランスでは「anti(アンチ)」を「well(ウェル)」に言い換え、年齢を重ねた美しさ「ウェルエイジング」を提案するのが今ドキのパリマダムです。
パリマダムの撮影をしている時、「まさに!」と感じたエピソードがありました。80歳の現役デザイナーであるマダムを撮影する日、一緒に現れたのは歳の離れたボーイフレンド! 80も越えれば髪も白く、若かりし頃に比べ毛量も減っています。色気なんて……もうないでしょ、とお思いでしょうが、そんなことはないのです。年齢を重ねても女性らしさを忘れず、とびきりの笑顔を返してくれたマダムに、それを見守る彼。最後は一緒に撮らせていただきました。こういう女性、カッコイイと思いませんか?
白髪はOK? NG?
パリマダムのグレイヘア論
日本人の黒髪に比べ、パリマダムは目や髪色の色素が薄いため、白髪への抵抗感は少ないかもしれません。ですが、本人がそう思っていなくても夫やパートナーが気にして「髪を染めたら?」と意見する男性もいるのだとか。
ここでまた“フランスらしさ”を感じたのは、私の身近にいるマダムたちは、だからと言って髪の毛を染めるわけではないんですよね。結局のところ、自分のスタイルに合っているか否かだと思います。
グレイヘアの認知はフランスでも高まっていて、数年前からグレイヘアのネットワークや専門のブログもあります。50代、60代のリアル世代の女性たちが活発に意見交換をし、SNSで自分のスタイルを発信するなど、ここ数年でエイジングに対する価値が大きく変わってきています。それを柔軟に受け入れ、楽しんでいるのがパリマダム。カッコよく生きる身近な女性をお手本に、自分らしく歳を重ねたい……そう感じています。
撮影/YOLLIKO SAITO
取材・文/長谷川真弓
構成/片岡千晶(編集部)
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